2006年度 徳島大学 共通教育 教養科目群
EDB
歴史と文化 / History and Culture
仏教から見た環境論
教授・安東 諒 2単位 前期 水(3・4) 全(全)
このままで行けば地球の未来はあまり明るくないらしい.環境を再考する考え方の一助にでもなればと思う.現代の教養とはいったい何なのか? 今回使うこの本がその解答の一端を教えてくれているのではないだろうか? 教養とはこういうことを学ぶことではないだろうか? 青年時代にこういう本を一冊読んでおくことは悪くないと思う.
授業の目的の手がかりとして下記の教科書『木を植えましょう』を使う.「この本一冊で苗木を一本植えることができます」と帯にあるが,これは単なる植樹奨励の本ではない.著者の正木高志氏はインドの哲学·思想や仏教にも深く通じていて,森の復活の夢を語っている.それが地球環境の見直しや人間の物欲一辺倒の意識からの離脱と連なり,世界平和までを射程に入れての論が述べられています.豊かな自然が人間の意識を豊かにして行き,やがてそれが地球救済に到達するであろう,ということだと思う.
環境浄化,植樹,アメリカンドリーム,スモール イズ ビューティフル,仏教思想(相互依存)
具体的な成果を目安にする授業ではないので,到達目標などというものはないに等しいです.強いて言えば,何かを学べばそれが即役に立つというような短絡な思考法をしないようなものやことの考え方を学ぼうとすることを目標とします. 換言すれば,一本の木を植えれば,それが,いずれやがて世界平和に繋がるような考え方の習得です.
1.教科書の全体は八章から成っています.便宜のために記しておきます.
2.第一章 私も病んでいると桜の老木は言った. 第二章 腐敗したぬか床の漬物 が腐るように .第三章 森へのめざめ. 第四章 森の掟 .第五章 ∞か ら○へ(スモール イズ ビューティフル). 第六章 森の復活祭. 第七章 花鳥安国論. 第八章 森を破壊する文明.
3.われわれは森から来た われわれは森だ われわれは森へ帰る(扉の言葉)
4.アメリカンドリームを追いかけながら,そこからハエのように湧き出てくる問題をひとつひとつ潰してゆこうとしても,解決はおぼつかなく,事態は悪化してゆくだけだろう(p.19)
5.今日の世界は経済という名の暴力にみちている.そしてその暴力は,ほとんど野放しになっている.それどころか,富を持てるだけ持つこと──アメリカンドリーム──が理想と見なされている(p.44)
6.なぜ,隣人を愛さなくてはならないか? 隣人とは自分自身に他ならないからだ(p.68)
7.人類はこれからどこへゆくのか,それは現代のぼくたちの行動にかかっている.このまま森林が伐採されるなら,人類は文明によって滅びるしかない(p.157)
8.全体が仏教思想や道教思想を裏打ちとしているので,その分野の原典をも簡略に説明する.
9.数回の小レポート(授業時に説明する)を課し,日本語の読解力と表現法の練習を行う.
講義
『木を植えましょう』 正木高志(南方新社) 720円(〒891-1202 鹿児島市西伊敷六ー三九ー五),(℡.099-228-8793)上記へ各自が直接注文すれば,送料は不要で購入できるので,用意しておくこと.また生協の書店にても購入可能です.
『般若心経』『老子』『荘子』等の文章を適宜コピーして配布する.『出アメリカ記』正木高志(雲母書房)他.
教科書のまとめとしての主レポート(4000字以上)と数回の小レポートと授業中の質疑応答を勘案して評価する.
他学部,他大学学生も履修可能
→コンテンツサーバ (EDB/CMS)
安東(656-7115, ando@ias.tokushima-u.ac.jp)
 オフィスアワー: 金曜日 12時∼13時 安東中国文学研究室(総合科学部1号館3階)
以上の内容に興味や関心を持っている人の受講が望ましい.