2006年度 徳島大学 共通教育 教養科目群
EDB
生活と社会 / Living and Society
民族と移民からみる世界
助教授・樋口 直人 2単位 後期 木(5・6) 全(全)
グローバル化の時代に向けた社会のあり方を学んでもらうことが,本講義の目的となる.私たちが当たり前の存在として考えている「国家」や「国民」は,歴史的にかなり無理をして作られたものであり,そうであるがゆえにさまざまな問題を抱えている.さらに,グローバル化が進むにつれて,今までのような国民国家では時代に適応できなくなってきた.そうした状況をふまえて,ここでは特に「民族」と「移民」をキーワードとして,19世紀から現在までを振り返る.
半年間の講義は,大きく3つのパートにわけられる.第1のパートでは,19世紀における国民国家の形成とそれがもたらす矛盾を,日本とヨーロッパにおける言語と民族に着目して解説する.第2のパートは,アメリカと日本の例に則して,多民族国家の形成とその問題を理解してもらうことが目的となる.第3のパートでは,グローバル化のなかでの移民労働者を中心に,今の世界と日本がどのように変化しているのかを考える.講義内容に関して具体的なイメージを持ってもらうために,アメリカと日本の外国人労働者に関する映画を2本みてもらう.
民族問題,国民と国家,グローバル化の背景を理解する.また,今までとは異なる観点から欧米や日本の社会みることができるようにしてほしい.
1.0.オリエンテーション
2.1.国民国家はどのようにしてできたのか
3.(1)「日本人」とは誰か?
4.(2)国民統合と言語──フランス人はいつからフランス語を話すようになったのか
5.(3)もう1つのヨーロッパ──アイルランドからみたイギリス
6.2.多文化社会の形成
7.(1)世界システムのなかのハワイ
8.(2)アーミッシュという生き方
9.(3)ロサンゼルスとメキシコ──移民がつなぐ2つの地域
10.(4)多文化主義の現在:ドキュメンタリー『文化は混血する』OR『ブレッド·アンド·ローズ』鑑賞
11.(5)統合から排除へ──フランス都市暴動の社会的背景
12.3.多民族社会日本
13.(1)在日コリアンが選挙に行く日──外国人参政権と国民国家
14.(2)もう1つの日本:映画『オーバーステイ』鑑賞
15.(3)国境の越え方──イラン人を中心に
16.(4)バングラデシュからのデカセギと消費社会の夢
講義
田中克彦『ことばと国家』岩波新書,1981年,640円,山中速人『ハワイ』岩波新書,1993年,640円
授業中の課題10%,大レポート50%,小テストレポート40%.詳しくは初回に資料を配付して説明するので必ず出席すること.課題をかなり出すので,単位をとりたいだけの受講生には不向き.
他学科,他学部学生も履修可能
→コンテンツサーバ (EDB/CMS)
樋口(1210, 088-656-7200, vyw03403@nifty.ne.jp)
 オフィスアワー: 前後期 水曜日12時∼13時,樋口研究室(総合科学部1号館南棟2階)
これまで何気なく使っていた「国民」「日本人」「日本語」といった言葉そのものを見直す機会にしてほしい.また,外国に関心のある学生の受講を歓迎する.