2006年度 徳島大学 共通教育 教養科目群
EDB
人間と生命 / Humanity and Life
罪と悪-旧約聖書の世界-
教授・吉田 昌市 2単位 後期 月(3・4) 全(全)
自己を含めたこの世界に悪が存在するのは紛れもない事実であるが,この事実をどのように受けとめ,どのように理解し,対処するかは人により,思想的立場によってまちまちであろう.また,何を悪であると考えるかも,人により時代によって,けっして一様ではない. 西洋の思想を一つのモデルとして,こうした問題を考えることは,アジア人である我々にとっても大いに役立つのではないかと期待される.
この講義では,主として旧約聖書の中から「悪」や「罪」に関わるいくつかのテクストを選び,それを精読することによって,西洋の人々が「人間と悪」「世界と悪」という問題についてどのようなことを考えてきたのかを考察していく. 特に旧約聖書『ヨブ記』に焦点をあて,この難解とされる書を理解し,その現代的意味を示すことを目指す. なお,西洋との比較のために,日本や東洋の場合(主に仏教の思想)に言及することもあるだろう.
苦難(悪),応報思想,神,神の似すがた
『ヨブ記』とそれが提起する問題について,自分なりの見方を持つようになること.
1.今後の講義について,あらましを説明する.
2.旧約聖書『創世記』:イスラエル民族の歴史を簡単に解説し,その後,旧約聖書『創世記』の創造物語を読む.
3.旧約聖書『創世記』(その二):第二の創造物語を取り上げる.特に,蛇の誘惑とアダムとエバの堕罪に焦点を当てる.
4.旧約聖書『創世記』(その三):「カインとアベル」の物語を取り上げる.
5.トマス『神学大全』より「天使の罪」:禁断の果実を食べることがどのような意味で「罪」「悪」なのかを,トマス『神学大全』の「天使の罪」の議論を参照しながら考える.
6.旧約聖書『ヨブ記』:プロローグとエピローグ,「ヨブ最初の独白」を読み,『ヨブ記』の問題を提示する.
7.『ヨブ記』その二:「ヨブ最後の独白」「神との対決」と読み進み,テクストについて一通りの解説をするとともに,『ヨブ記』解釈上の問題点をも示す.
8.『ヨブ記』その三:新しいテクストも提示して,『ヨブ記』の解釈を行う.
9.『ヨブ記』その四:新しいテクストも提示して,『ヨブ記』の解釈を行う.
10.『ヨブ記』その五:新しいテクストも提示して,『ヨブ記』の解釈を行う.
11.ドストエフスキー『カラマーゾフの兄弟』とエリ·ヴィーゼル『夜』より:近現代のヨブ的苦難,ジェノサイドの衝撃
12.ドストエフスキー『カラマーゾフの兄弟』とエリ·ヴィーゼル『夜』より(続き):近現代のヨブ的苦難,ジェノサイドの衝撃
13.旧約聖書に帰って:聖書の宗教は,はたしてジェノサイドの衝撃に耐えることができるのか?こうした観点から,旧約聖書の思想を様々に吟味する作業をしてみたい.
14.旧約聖書に帰って(続き):聖書の宗教は,はたしてジェノサイドの衝撃に耐えることができるのか?こうした観点から,旧約聖書の思想を様々に吟味する作業をしてみたい.
15.試験またはレポートについて:期末試験またはレポートの課題の提示など
16.試験あるいはレポートの返却と講評
適宜プリントを配布し,参考文献も講義の中で紹介する.
授業への取り組み方+何度か行う予定の小テスト+学期末試験またはレポート
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