2008年度 徳島大学 共通教育 教養科目群 — 毎年(前期)

自然と技術 / 生物がつくる鉱物-生体鉱物-

Science and Technology / Biomineral

平成19年度以前の授業科目:『自然と技術 / 生物がつくる鉱物-生体鉱物-』

平成16年度以前 (医保は17年度以前) の授業科目:『地学 / 生物がつくる鉱物-生体鉱物-』

准教授・沼子 千弥

2単位

 月(1・2) 全(全)

授業のタイプ

講義

授業の目的

生物が鉱物を形成する生体鉱物化現象を通じて,地球表層で起こっている物質循環に生物がどのように関わっているかを広い視野から理解する.また生体鉱物に関連する物質科学的知識の広い分野への応用の可能性について理解する.

授業の概要

天然に産するダイヤモンドや石英など無機固体物質を鉱物と呼び,生物が鉱物を形成する現象を生体鉱物化現象と言う.生物というと有機物というイメージが強いが,骨や歯,貝殻などの重要な硬組織を鉱物で形成している生物は多い.また,生体鉱物として形成される鉱物は,非生物系では珍しい種類のものや硬組織の利用目的にかなった特別な形を持つものが多く,生物の行っている鉱物形成は非常に興味深い.こういった基礎科学的な見地に基づいた研究に加え,近年では生体鉱物を模倣した傾斜機能材料や生体親和材料の合成,その医·歯学的応用,環境科学への応用なども盛んであり,生体鉱物は古くて新しい,境界領域の最先端のトピックスになっている. 本講義では,貝の歯に見られる精緻な生体鉱物化現象の具体例を紹介しながら,地球を構成している物質に生命活,動がどのように関わっているか,現在知られている生体鉱物にはどのような種類や特徴があるのか,それらの物質科学的·生命科学的な意義はどのようなものか,環境科学や材料工学への応用などについて解説を行う.さらに生体鉱物の研究に関わる最先端の研究手法についても触れる.

キーワード

生体鉱物,ヒザラガイ,貝殻,真珠,硬組織

受講者へのメッセージ

生体鉱物は,基礎科学だけでなく医·歯学,工学を網羅する広い分野にわたるトピックス,です.開設分野は地学ですが,はじめて地球科学に触れる方でも理解できるよう,講義内容を工夫致しますので,積,極的·主体的に授業に参加してください.また,代返,レポートの丸写し等を行い自発的な学習を怠った学生に対し,ては,本人も協力者もあわせて不可の評価をいたします.他人に頼らずに,自分で学習することを心がけてください.

到達目標

1.化学組成と結晶構造により定義された天然の無機固体物質「鉱物」という概念を理解できる.
2.生物の硬組織にも多様な鉱物種が存在することを理解する.
3.生体鉱物の非生物系の鉱物にはない様々な特徴を理解する.

授業の計画

1.天然の無機固体化合物「鉱物」,原子・イオン・結晶
2.生物が環境から元素を回収する作用 -生体濃縮現象-
3.濃集した元素はそれからどうなる?(1) 元素の最適濃度範囲と毒性
4.濃集した元素はそれからどうなる?(2) 排泄,無毒化,貯蔵
5.タコ・イカ・ゴカイの硬組織
6.生物が鉱物を形成する不思議 -生体鉱物の種類・形状と分布-
7.貝の歯とヒトの歯 フッ素処理はなぜ歯を硬くするのか?
8.磁石をつくる貝 - ヒザラガイ
9.ヒザラガイの歯の形成プロセス
10.履歴書になる硬組織 -耳石や貝殻の年輪構造
11.貝殻の構造のおもしろさと貝殻を構成する鉱物の特徴 (1)
12.貝殻の構造のおもしろさと貝殻を構成する鉱物の特徴 (2)
13.真珠の形成(1)
14.真珠の形成(2)
15.生物鉱物とその応用
16.まとめ

成績評価の方法

出席,予習プリント,試験,レポート,学習状況を総合的に判断して評定を行う.

再試験の有無

教科書

教科書:大越健嗣·「貝殻·貝の歯·ゴカイの歯」成山堂書店 ベルソーブックス008,平成13年,1600円

参考書:講義中に個別に指示,必要に応じてプリントも使用する.

連絡先

沼子(3202-2, 088-656-7265, numako@ias.tokushima-u.ac(no-spam).jp)
オフィスアワー: 前期 木曜日 12時∼13時