ヨーロッパ社会研究I
教授・佐久間 亮
2単位
目的
「ヨーロッパ歴史·社会論I 」をうけて,現代イギリスの社会と文化の特徴について論じる.イギリス社会の多様性,そのつかみ所のなさについては,みなさんご承知のように,そもそも日本語のイギリス人に対応するコトバはないことからもわかるとおり.イングランド人,スコットランド人,ウェールズ人それぞれの文化的差異を含みながら,イギリス人という意識(ブリティッシュネス)が形成されたのは,せいぜいここ200年ほどのことだ.さらに,イギリスはジェントルマンとノン·ジェントルマンという二つの階層に隔てられた「階級社会」だったのだし,これに20世紀になって,カリブ系,インド·パキスタン系,さらに中国系移民が流入して,さらに複雑化したのだ.これらの民族·文化集団の多様化は,前期に説明する帝国の歴史の産物であり,逆にこれだけ多様な集団がイギリス人として統合され得た理由も,かつての帝国の存在を抜きにしては考えがたい.本講義ではイギリス社会の多面性について説明するとともに,EU統合という歴史的趨勢の中で,イギリスがどこへ向かおうとしているのか,社会·文化論の観点から見通しを得たいとおもう.
概要
現代イギリス社会·文化研究入門
キーワード
ナショナルアイデンティティ,文化多元主義,伝統の創造,文化帝国主義,ディボルーション
先行科目
注意
この講義は,奇数年度に開講する.したがって,2008年度は開講しない. 「ヨーロッパの歴史と社会I 」と合わせて受講することを希望する.なお,視覚的印象は,テーマを理解する上で欠かせない要素である.授業中にもしばしばビデオを利用するが,以下に参考となる映画,(ビデオ化され入手しやすいもの)をあげておく.予め観ておくことが望ましい.授業中にも言及されるだろう.『シーズン·チケット』Purely Belter (2000), 『ウェールズの山』The English man who went up a hill but came down a mountain (1995), 『ブラス!』Brassed Off(1996), 『フル·モンティ』The Full Monty (1997)
目標
1. | ·現代イギリス社会と文化の多様性,流動性を理解すること |
2. | ·より一般的に,歴史的パースペクティブから現代の事象を理解する重要性を体感すること |
計画
1. | 現代イギリス社会の概観-階級社会の解体と文化多元社会の形成?- |
2. | イギリスに受験競争はある?(1) |
3. | イギリスに受験競争はある?(2) |
4. | イギリスに受験競争はある?(3) |
5. | イギリスに受験競争はある?(4) |
6. | フットボール文化の功罪(1) |
7. | フットボール文化の功罪(2) |
8. | フットボール文化の功罪(3) |
9. | フットボール文化の功罪(4) |
10. | 「ウェールズの山」と多文化社会イギリス(1) |
11. | 「ウェールズの山」と多文化社会イギリス(2) |
12. | 「ウェールズの山」と多文化社会イギリス(3) |
13. | イギリスは解体するのか-EU統合とディボルーション- (1) |
14. | イギリスは解体するのか-EU統合とディボルーション- (2) |
15. | イギリスは解体するのか-EU統合とディボルーション- (3) |
16. | 期末試験 |
評価
期末試験の結果によって評価をおこなう.
再評価
行わない
教科書
教科書は使用せず,授業中に配布するプリントを中心に講義をすすめる.
連絡先
- オフィスアワー: 火曜12時∼13時
備考
隔年開講.