2008年度 総合科学部 自然システム学科 数理·情報コース 数理科学サブコース 学部課程 — 3年(前期)

2008年度 総合科学部 自然システム学科 物質·環境コース 学部課程 — 3年(前期)

量子力学I

教授・日置 善郎

2単位

目的

量子力学の基本的構成の理解

概要

量子力学は,素粒子物理·原子核物理や物性物理といった現代物理学の中核であるばかりでなく,電子工学のような最先端科学技術の重要な基礎ともなっている.従って,物理系分野を専門とする学生だけでなく,自然科学一般を専攻する学生も,その基本的な考え方を理解することが望まれる.ところが,そこにおいては,物体の運動の情報は,古典力学における位置ベクトルや速度ベクトルのような理解しやすい量ではなく,初学者にとっては何とも掴み所のない波動関数という量にすべて含まれており,その波動関数の振る舞いを規定するのは,これまたニュートンの運動方程式ではなく,シュレディンガー方程式という名の波動方程式である.この結果,一旦学習を始めても多くの学生は,その入り口で頭を混乱させ立ち往生することになってしまう.この講義は,この量子力学への軟着陸を目指した入門的解説であり,量子力学の中でも特に基本的と考えられる話題(下記)に焦点を絞り,必要に応じて演習も取り入れながら話を進めていく.

キーワード

シュレディンガー方程式,波動関数,ハミルトニアン,不確定性原理

先行科目

力学

注意

やさしく解説するとは言っても,講義だけですべてを理解するのは不可能.当然予習·復習等は不可欠.

目標

1.量子力学の基本方程式はシュレディンガー方程式であることを理解し,簡単な系にそれを適用して,実際に解の波動関数を求めることが出来るようになること.

計画

1.古典力学から量子力学へ(1)自然法則とその適用限界(2)古典物理学が直面した困難
2.古典力学から量子力学へ(3)極微世界の新法則への手掛かり
3.量子力学のための数学(1)複素数(2)微積分(3)微分方程式
4.量子力学のための数学(4)偏微分とベクトル解析(5)演算子の固有値と固有関数
5.シュレディンガー方程式(1)波動の数学的表現(2)時間に依存するシュレディンガー方程式
6.シュレディンガー方程式(3)時間を含まないシュレディンガー方程式(4)量子力学という体系
7.1次元での束縛状態(1)井戸型ポテンシャル(2)無限に深い井戸の場合(3)有限の深さの井戸の場合
8.1次元での束縛状態(4)固有関数の規格直交性
9.1次元での反射と透過(1)確率の保存と確率流密度
10.1次元での反射と透過(2)階段型ポテンシャル1
11.1次元での反射と透過(2)階段型ポテンシャル2
12.1次元での反射と透過(3)箱型ポテンシャル障壁
13. 〃
14.1次元での反射と透過(4)固有関数の規格直交性
15. 〃
16.期末試験

評価

学期末試験(持ち込み不可)だけでなく,数回行う小テスト(持ち込み不可)の結果も総合して判定する.

再評価

有 (但し,不合格者全員が自動的に対象となる訳ではない)

教科書

教科書: 日置善郎『量子力学』吉岡書店

参考書: 原康夫『量子力学』岩波書店など.この他に必要に応じてプリント等を配布する.

連絡先

日置(総合科学部3号館 1N04 号室, 088-656-7234, hioki@ias.tokushima-u.ac(no-spam).jp)
オフィスアワー: (前期)火曜日11時50分∼13時(これ以外の時間でも訪問可)