薬物治療学2
目的
薬剤師が真に医療チームのー員として医療サービスを提供するためには,薬の物性について知ることはもちろんであるが,その上に個々の疾病に対する知識を身につけることが大切である.そこで本授業では,将来,適切な薬物治療に貢献できるようになるために,消化器系疾患,腎臓と尿路の疾患,生殖器疾患,呼吸器・胸部疾患,代謝性疾患,神経・筋疾患,およびそれらの治療に用いられる代表的な医薬品に関する基本的知識を修得する.併せて,薬物治療実施に必要な情報を自ら収集するための基本的技能を身につける.
カリキュラム関連
薬学モデル・コアカリキュラムC-14-(3) の一部に相当
注意
処方箋に従って調剤するだけならば薬の知識だけでもやっていける.しかし薬剤師がチーム医療に参加するには専門用語,臓器別疾患の基礎知識や病棟でのルールなどを理解・把握するという前提がないと不可能である.
また創薬に取り組む場合においても,薬物が使用される疾患のことについて学ぶことは有用であると考える.
本講義では疾患と治療薬について全ての内容を網羅することはできないが,到達目標に挙げた項目に関しては出来るだけ疾病の内容に重点を置き,薬物や病態のスライドを提示しながら授業を進行する予定である.
目標
1. | 消化器疾患
- 消化器系の部位別(食道,胃・十二指腸,小腸• 大腸,胆道,肝臓,膵臓)に代表的な疾患を挙げることができる.
- 消化性潰瘍の病態生理,適切な治療薬,およびその使用上の注意について説明できる.
- 腸炎の病態生理,適切な治療薬,およびその使用上の注意について説明できる.
- 肝炎・肝硬変の病態生理,適切な治療薬,およびその使用上の注意について説明できる.
- 膵炎の病態生理,適切な治療薬,およびその使用上の注意について説明できる.
- 以下の疾患について概説できる.
食道癌,胃癌,肝癌,大腸癌,胃炎,薬剤性肝障害,胆石症,虫垂炎,クローン病
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2. | 腎臓・尿路の疾患
- 腎臓および尿路における代表的な疾患を挙げることができる.
- 腎不全の病態生理,適切な治療薬,およびその使用上の注意について説明できる.
- ネフローゼ症候群の病態生理,適切な治療薬,およびその使用上の注意について説明できる.
- 以下の疾患について概説できる.
糸球体腎炎,糖尿病性腎症,尿路感染症,薬剤性腎症,尿路結石
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3. | 生殖器疾患
- 男性および女性生殖器に関する代表的な疾患を挙げることができる.
- 前立腺肥大症の病態生理,適切な治療薬,およびその使用上の注意について説明できる.
- 以下の疾患について概説できる.
前立腺癌,異常妊娠,異常分娩,不妊,子宮癌,子宮内膜症
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4. | 呼吸器・胸部の疾患
- 肺と気道に関する代表的な疾患を挙げることができる.
- 閉塞性気道疾患(気管支喘息,肺気腫)の病態生理,適切な治療薬,およびその使用上の注意について説明できる.
- 以下の疾患について概説できる.
上気道炎(かぜ症候群),インフルエンザ,慢性閉塞性肺疾患,肺炎,肺結核,肺癌,乳癌
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5. | 代謝性疾患
- 糖尿病とその合併症の病態生理,適切な治療薬,およびその使用上の注意について説明できる.
- 高脂血症の病態生理,適切な治療薬,およびその使用上の注意について説明できる.
- 高尿酸血症・痛風の病態生理,適切な治療薬,およびその使用上の注意について説明できる.
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6. | 神経・筋の疾患
- 神経・筋に関する代表的な疾患を挙げることができる.
- 脳血管疾患の病態生理,適切な治療薬,およびその使用上の注意について説明できる.
- てんかんの病態生理,適切な治療薬,およびその使用上の注意について説明できる.
- パーキンソン病の病態生理,適切な治療薬,およびその使用上の注意について説明できる.
- アルツハイマー病の病態生理,適切な治療薬,およびその使用上の注意について説明できる.
- 以下の疾患について概説できる.
重症筋無力症,脳炎・髄膜炎,熱性けいれん,脳腫瘍,一過性脳虚血発作,脳血管性痴呆
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計画
1. | 上記到達目標に従い講義を進める,講義回数は到達目標の内容により異なる. |
教科書
スタンダード薬学シリーズ6「薬と疾病Ⅱ」薬物治療(1) 東京化学同人