2008年度 歯学部 歯学科 学部課程 — 5年(前期)

統合臨床講義

Interdisciplinary Clinical Dentistry

形態

講義

授業目的

基礎歯科医学,隣接医学および臨床歯科医学の概要を学習した学生に対して,臨床実習を受ける前に,各科目の知識を統合させ,実際の臨床の諸問題を解決できる能力を養わせることを目的とする.さらに基礎医学の必要性を自覚させ,臨床歯科医学と隣接医学との関わりを説明し,歯科医学における基礎医学と隣接医学の重要性を認識させることを目的とする.
方法として,12診療科が2∼3回の授業を担当する.各診療科の教員は各科の特色を生かしながら,歯科臨床科目を修得した学生に対して,もう一度基本に帰って基礎的なことを中心に理解しやすいように工夫した講義を行う.日程表は教務委員会で決定する.

授業方法

講義 (なお,この講義は,教員も相互に授業を聴講することができるものとする.)

授業場所

月曜1・2時限 示説室

注意事項

試験は学生便覧の歯学部規則を満たしている者に対して行う.

授業計画

内容担当
1.副病院長
2.
診断や治療・予防方針の決定などの臨床上の意思決定を行うに際して,臨床疫学によるエビデンスがどのように活かされるべきか,また,新しいエビデンスはどのようにして生成されるのかなど,Evidence-Based Dental Practicesの基本を理解する.
予防歯科学
3.
広義のプラークコントロールについて,定義や基礎理論から応用的・実際的な技術論までの,統合的な理解を目指す.このことによって,様々な歯科保健・医療シーンにおいて,適切なプラークコントロール指導(広義)ができる能力を形成する.
4.
種々の口臭の原因と特徴を説明し,口臭症の診断・治療・予防についての理解を目指す.また,関連する口腔疾患,全身疾患の知識を深め,口臭に対するアプローチの意義を理解する.
5.
歯髄炎など保存領域の疾患においても,細菌の侵襲に対する防御機構は基本的に変わらない.免疫機構という点よりこれらの疾患を説明し,全身から個々の疾患・治療を考える視点を養う.また,この観点より全身疾患との関わり合いを説明する.
歯科保存学第一
6.
齲蝕罹患に関与する様々な因子のうち唾液因子について概説すると共に,唾液腺機能低下をもたらす全身的背景と齲蝕発生との関わりについて,特に歯根面齲蝕に的を絞り説明する.
7.
歯周病の概略を説明した後,全身疾患に関連した歯肉炎をスライドで示し,その病態と全身状態の関連を考察する.また,薬物誘発性歯肉増殖症についても概説する.
歯科保存学第二
8.
糖尿病・AIDSなどの患者に現れる歯周炎をスライドで示し,種々の疾患が歯周組織にどのような影響を及ぼしているかについて,基礎的な面から考察する.さらに,心疾患,脳血管障害(動脈硬化),糖尿病などの生活習慣病の危険因子の一つとして,歯肉炎が上げられることを概説する.
9.
高齢化が進む我が国では高齢者に対する歯科治療の機会がいっそう増えていくものと思われる.しかし,補綴学的な知識だけではなく高齢者の基礎的な知識も必要とされるため,まず,第一回目に高齢者の全身と口腔の加齢変化について解説する.
歯科補綴学第一
10.
卒前歯科教育を国際的な視野でみると,それぞれの国の政治,経済,習慣などによって,その内容には違いが見られることが多い.そこで,英国Birmingham大学歯学部における卒前歯科教育を紹介し,徳島大学歯学と比較する.
11.
歯科臨床は少なからず咬合に対する介入を伴うので,臨床実習に上がる前に,講義と実習で学び体得した咬合についての知識や技術を整理,復習する必要がある.咬合異常がもたらす局所的影響および二次的に生ずる広範囲(全身)に及ぶ影響について述べ,咬合の診断法および治療法について概説する.
歯科補綴学第二
12.
歯科が関与する睡眠障害として,歯ぎしり(ブラキシズム)と睡眠時閉塞性無呼吸症候群などがある.これらについてその病態,発症メカニズム及び歯科的対応等について述べる.
13.
老化についての一般的理解と,加齢による顎口腔の組織や機能の変化について概観し,高齢者の診療に際しての注意点などについて述べる.
14.
とくに全身疾患と関連の深い顎口腔の疾患,全身の一部分として口腔に発現する疾患・症状(口腔粘膜疾患・血液疾患など)を中心に講義する.また,口腔外科手術における解剖学的知識,隣接医学の重要性を述べる.
口腔外科学第一
15.
腫瘍,外傷,顎変形症,先天異常,顎関節疾患,炎症などの口腔外科疾患における基本的検査法・診断法を紹介するとともに,最新の診断法について概説する.
16.
腫瘍,外傷,顎変形症,先天異常,顎関節疾患,炎症などの口腔外科疾患における最新の治療法を紹介するとともに,先進的治療技術について概説する.
17.
高齢化社会の到来に伴って,全身疾患を有する患者が口腔外科手術を受ける機会が増加している.個々の患者に対して,手術に耐えられるか,また全身疾患のコントロール状態がどうかを判断することは治療上最も重要な判断である.本講義では,手術患者の術前評価の要点を説明する.
口腔外科学第二
18.
循環器疾患に罹患している患者が,歯科を受診し,観血的処置を受けるケースが増加している.口腔外科的治療を行うにあたり,感染性心内膜炎予防のための抗生物質投与,ワーファリン等の経口抗凝固療法薬の中止の判断,薬剤相互作用等の考え方は急速に変化している.この講義では,循環器疾患患者の観血的処置の注意点について述べる.
19.
口腔内に発症する疾患に対して,外科的治療法以外に薬物を主体とする治療法が選択される疾患が数多くある.例えば,ヘルペス感染症やドライマウスなどである.本講義では,これらの疾患に対する治療法の根拠とその内科的治療法について説明する.
20.
栄養障害やホルモン分泌異常,精神疾患等の全身疾患の歯科矯正学的な重要性について概説するとともに,これらの疾患を有する患者の歯科矯正治療を供覧し,歯科臨床における隣接医学知識の必要性を説く.
歯科矯正学
21.
外科的矯正治療や歯周疾患の歯科矯正治療を考えた時,複数の専門分野にまたがった知識・診療技術が要求され,他科との協同治療の重要性がクローズアップされている.そこで,他科と協同治療を行った症例を紹介し,歯科矯正治療のこれらにおける役割を検討する.
22.
小児歯科医療において,歯や咬合の発育異常は,よく観察される.これらの疾患について,発育の過程を確認し原因を考えながら,最善の歯科治療方法を検討する.
小児歯科学
23.
小児の口腔内の疾患はしばしば全身疾患の影響を受ける.これらの症例を列挙し,全身との関わりを基礎医学的見地から検討し,その治療法について説明する.
24.
口内法エックス線撮影法を中心として,各種画像検査を行うために必要な知識について述べる.
歯科放射線学
25.
口内法エックス線撮影法を中心として,その結果を説明するために必要な知識について述べる.
26.
脳卒中の時には顎運動,舌運動,味覚などが阻害される.中枢神経系の解剖学との関連で講義し,口腔領域にみられる病的反射について述べる.
歯科麻酔学
27.
既往歴に局所麻酔薬アレルギーがあるという患者に対して,問診の仕方や検査法,対応策について講義する.
28.
近年,患者の疾患の診断だけでなく,患者と医療従事者とのコミュニケーションが求められるようになり「医療面接」を始めとする医療コミュニケーション力のスキルアップを行う必要が出てきた.コミュニケーション力の向上の方法の一つに「コーチング」がある.「コーチング」の導入部分の理解を深める.
総合歯科診療部
29.
臨床実習を開始するにあたり,医療従事者として望ましい態度についてク ルーフ 討議を行う.
30.
インプラント治療は,異物感が少なく,天然歯と同等の咀嚼機能や審美性の回復が可能なことから,欠損補綴治療の1つとして幅広く臨床応用されている.今回は,インプラント治療の基礎,特に補綴について述べるとともに,徳島大学病院での現況を解説する.

成績評価の方法

筆記試験を行い,学生の理解度を評価する.
100点満点で60点以上のものを合格とする.

再試験

行う.