基礎医学(2) / ウイルス学・ウイルス学実習
教授・足立 昭夫
目的
1. ウイルスの実体,ウイルス性疾患の発症病理と疫学についての理解を身につける.
2. 遺伝子治療におけるウイルスベクターの有用性と限界についての理論的理解など,疾病の原因としての理解だけでなく現代医学・生物学におけるウイルスの応用やトピックスについて理解する.
概要
ウイルスは疾病の病原体として発見され,現在も新たなウイルス性疾患とその起因ウイルスとが見出されている.これらウイルス性疾患の起因ウイルスの性質を知り,その感染経路や発症病理を学ぶことは,その疾患を克服するための重要な課題である.その一方でウイルスは,細胞レベルでのウイルス増殖機構の解析から生命現象の基本的構図が解明されており,それらの知見をもとに現在では遺伝子治療のベクターとしての応用など単に疾病の病原体というのに留まっていない.従って,ウイルス学の講義や実習においては,疾患の病原体としてのウイルスについて学ぶことを基本に捉え,且つ,ウイルスを用いた研究の現状と今後の方向をも理解でき知識を獲得することを目的とする. ウイルス学の講義内容は総論,各論,特論に区別してある.ウイルス学総論では,ウイルスの本質,その増殖機構,宿主との相互作用,感染論を理解し,ウイルス学各論で個々のウイルスの属性とその疾患について習得する.また,特論でウイルス学に関係するトピックスに触れる.
授業方法
講義:テキスト,プリント,板書,スライド
実習:テキストならびにプリントによる説明,実習,レポートに基づく指導
その他:課題研究(夏期休業期間中希望者に)
目標
1. | 主要なウイルスについて,それにより引き起こされる感染症名が挙げられる. |
2. | 主要なウイルスについて,感染経路が説明できる. |
3. | 主要なウイルスについて,有効な予防法が挙げられる. |
4. | 主要なウイルスについて,有効な消毒法が挙げられる. |
5. | 化学療法剤の有効なウイルス性疾患名を挙げることができ,その有効性の原理を説明できる. |
6. | 代表的なウイルス性疾患(別項に示す)について,その疾病の自然史が説明できる. |
7. | ウイルスによる先天感染とその結果について説明できる. |
8. | TORCH 症候群や性行為感染症(STD)に含まれるウイルスについて説明できる. |
9. | 人畜共通のウイルス感染症について説明できる. |
10. | 主な血清学的診断法を挙げて,その原理と結果を説明できる. |
計画
回 | 大項目 | 中項目 | 内容 |
---|---|---|---|
1. | ウイルス学総論 | ウイルス学概論 | ウイルス学研究史,ウイルスの性状,分類, |
2. | 〃 | 感染論 | 伝播様式,疫学 |
3. | 〃 | ウイルスの増殖 | ファージの増殖,突然変異,細胞培養,動物ウイルスの増殖と遺伝,干渉現象 |
4. | 〃 | 化学療法 | 化学療法剤,インターフェロン |
5. | 〃 | 感染の病理 | 感染に伴う免疫反応,ウイルス性疾患の発症病理 |
6. | 〃 | 実験室内診断 | ウイルス分離,血清診断,ウイルス抗原の検出法,ウイルス核酸の検出法 |
7. | ウイルス学各論 | ポックスウイルス | |
8. | 〃 | ヘルペスウイルス | |
9. | 〃 | アデノウイルス | |
10. | 〃 | パポーバウイルス | |
11. | 〃 | パルボウイルス | |
12. | 〃 | ヘパドナウイルス | |
13. | 〃 | オルソミキソウイルス | |
14. | 〃 | パラミキソウイルス | |
15. | 〃 | ラブドウイルス | |
16. | 〃 | フィロウイルス | |
17. | 〃 | コロナウイルス | |
18. | 〃 | ピコルナウイルス | |
19. | 〃 | レオウイルス | |
20. | 〃 | カリシウイルス | |
21. | 〃 | トガウイルス | |
22. | 〃 | フラビウイルス | |
23. | 〃 | 出血熱ウイルス | |
24. | 〃 | DNA 腫瘍ウイルス | |
25. | 〃 | RNA 腫瘍ウイルス | |
26. | ウイルス学特論 | レトロウイルスと癌遺伝子 | |
27. | 〃 | 成人T 細胞白血病 | |
28. | 〃 | ヒト免疫不全ウイルス | |
29. | 〃 | ウイルス性疾患の分子発症病理 | |
30. | 〃 | ウイルス-宿主相互作用 |
評価
1. 実習レポート, 2. 総論試験(多肢選択法ならびに記述式), 3. 各論試験(多肢選択法ならびに記述式)
教科書
教科書としてMedical Virology 第4版(D. O. White & F. J. Fenner 著,Academic Press;第3版の訳が「医学ウイルス学」として近代出版から出ている)を使用し,プリントを随時使用する.
連絡先
- オフィスアワー: 月∼金 8:30∼17:30
備考
担当者は足立教授以外に,内山恒夫准教授,野間口雅子助教,山下知輝助教,各分野の専門の非常勤講師である.大部分の諸君にとってウイルス性疾患は身近で興味ある話題であろう.本学はウイルス学講座を持つという点で,微生物学を学ぶ上で日本でも有数の恵まれた環境にある.高いレベルの内容を分かりやすく教育するので,学生諸君もよく学び,恵まれた環境を生かして欲しい.