2008年度 徳島大学 共通教育 教養科目群 — 毎年(後期)

生活と社会 / ワーキングプアと現代の貧困

Living and Society / Workingpoor and the Problems of Today"s Poverty

平成19年度以前の授業科目:『生活と社会 / ワーキングプアと現代の貧困』

平成16年度以前 (医保は17年度以前) の授業科目:『社会学 / ワーキングプアと現代の貧困』

教授・吉田 浩

2単位

 火(1・2) 全(全)

授業の目的

今日の日本においては,全ては市場に委ねるべきだと主張する新自由主義の市場原理主義が支配している.全ては市場の競争に委ねられ,競争から我々を守ってくれた様々の規制やセーフティネットは緩和されるか撤廃され,成果を競う寒々とした競争社会となってしまった.この競争社会からは必然的に勝ち組と負け組みとが生じてきて,日本は格差社会となったということが多くの研究者,ジャーナリズムによって指摘され,報道されている.圧倒的多数の国民は負け組みに属しているが,問題はこの負け組みの実態である.そこには大量の失業者,百万をこえる生活保護世帯,ホームレス,ネットカフェ難民が属している.労働者も正規労働者と非正規労働者とに分断されている.非正規労働者にはパート,アルバイト,派遣労働者,請負労働者らがいるが,彼らの年収は300万円,いな120万の時代であって,彼らは生活保護世帯以下の生活を送るワーキングプアという層を形成している.逆に正規労働者には超長時間労働,超過密労働が課せられ,ここからも過労死,過労自殺という不幸な事態が多発している. このように今日の日本は,貧困問題が多岐多様にわたって拡大し深刻化してきていると共に,青年層の雇用が極端に困難となってきており,彼らの2分の1は非正規労働者である. そこでこの多様化する貧困問題の実態,とりわけ青年層のそれを押さえつつ,なぜこのような惨めな事態が成熟し,それも世界第2位の経済大国である日本で生じてきたのか,その原因を探求していきたい.

授業の概要

重層的にわたる日本の貧困問題の基本的実態を押さえつつ,その原因を解明していく

キーワード

ワーキングプア,格差社会,生活保護世帯,非正規労働者

到達目標

1.日本の今日の貧困の現状を正確に把握すると共にその問題点を確認し,同時にその原因と解決策とを解明していくこと

授業の計画

1.現代日本の貧困の実態の確認
2.同上
3.長時間労働,超過密労働と過労死,過労自殺
4.同上
5.非正規労働者と偽装請負
6.同上
7.非正規労働者の雇用と派遣労働
8.同上
9.青年労働者の雇用の実態
10.同上
11.貧困問題を引き起こす原因
12.同上
13.貧困問題解決のための途
14.同上
15.試験
16.総括

成績評価の方法

試験と講義内容に対する疑問,問題点を指摘する小レポートとによって総合的に評価する.疑問,問題点の指摘に対しては講義で答える

再試験の有無

教科書

特になし.ただしグラフ,図表,統計などの諸資料は適宜に配布する

参考書

橘木俊詔著,『格差社会』(岩波新書),森岡孝二著,『働きすぎの時代』(岩波新書),中野麻美著,『労働ダンピング』(岩波新書),門倉貴史著,『ワーキングプア』(宝島社新書),朝日新聞特別報道チーム,『偽装請負』(朝日新書),しんぶん赤旗国民運動部,『仕事が終わらない』(新日本出版社)等々,多数あり.

連絡先

吉田(088-656-7198, yoshida@ias.tokushima-u.ac(no-spam).jp)
オフィスアワー: 火曜日12時∼13時