2008年度 徳島大学 共通教育 教養科目群 — 毎年(後期)

人間と生命 / 身体の教育思想

Humanity and Life / Educational Thoughts on Bodies

平成19年度以前の授業科目:『人間と生命 / 身体の教育思想』

平成16年度以前 (医保は17年度以前) の授業科目:『教育学 / 身体の教育思想』

助教・弘田 陽介

2単位

 火(9・10) 全(全)

授業の目的

身体の教育といえば,すぐに体育という授業科目が連想されよう.私たちが知るところの体育とはスポーツの上達や機能の向上を図るものである.だが,近年,身体の機能性にのみ着目した体育ではなく,身体という多様な存在を自らの経験を通して把握するような形の思想実践が注目されつつある.そこで本授業では,日本の芸道論からデカルトの心身二元論,そして近年注目を集めるアフォーダンス理論などから抽出される身体論,認識論,生命論を紹介しながら,私たちの従来的な概念区分,例えば<身体>―<精神>,<物質>―<生命>,<自己>―<他者>に変更を迫るような身体の教育思想を探求してみたい.

授業の概要

以下の計画にあげたように,この講義は身体をめぐる領域横断的で歴史的な思想を並列的に紹介していくことで,私たちの身体観念が拡張していく.それぞれの思想家のテキストを学生と一緒に読み込んでいき,主題が異なるテキストからいくつかのストーリーラインを描いていく過程を通して,幅広い哲学・教育学・文学的な思索能力を身をもって経験することを課題とする.

キーワード

身体,教育思想,体育

受講者へのメッセージ

講義形式の授業ですが,皆さんと関心を共有するために,授業内で課題発表などを行ってもらいます.課題は大変かもしれませんが,今後皆さんが専門とする学科とのつながりを見つけて行ければと思います.

到達目標

1.私たちの有する医学・生理学的身体観とは,根本的に発想の異なる著作群を通覧することによって,自らの思索をまったく違った「他なるもの」へと拓いていくことを目標とする.また歴史的な哲学文献をテーマに沿って読解していくこと,そして,そのような古典を通して,私たちが生きている現代的状況を解釈し,レポートとしてまとめ上げていくことも求められる課題となる.

授業の計画

1.イントロダクション 講義の問題関心
2.芸道の思想 世阿弥の身体教育(1)
3.芸道の思想 世阿弥の身体教育(2)
4.近代的身体の発見 デカルトの身体(1)
5.近代的身体の発見 デカルトの身体(2)
6.民衆の身体 西洋中世 M・バフチンのカーニヴァル論
7.民衆の身体 西洋近代 B・ドゥーデン『女の皮膚の下』
8.ドイツ身体教育の発見 啓蒙期
9.ドイツ身体教育の発見 ペスタロッチからヘルバルトへ
10.ドイツ身体教育の発見 近代体育の父グーツムーツ
11.ドイツ身体教育の発見 Fr.キットラー メディア編成における身体
12.ベルクソンとベンヤミンの記憶論・ミメーシス(模倣)論
13.アフォーダンスという視座と甲野善紀『古武術の発見』
14.ラカンからドゥルーズへ 器官なき身体
15.レポートの課題についての説明とレポートの書き方概説
16.講義のまとめ

成績評価の方法

小発表など授業への取り組みを評価(50点).学期末レポート(50点).

再試験の有無

教科書

プリントとして授業中に配布

連絡先

弘田(yhirota@ias.tokushima-u.ac(no-spam).jp)
オフィスアワー: Eメールアドレス byu00616@nifty.com