2009年度 徳島大学 共通教育 教養科目群 — 毎年(前期)

人間と生命 / 鉄道の教育人間学 -なぜ子供は「でんしゃ」がすきなのか-

Humanity and Life / The Pedagogical Anthropology of Train

平成19年度以前の授業科目:『人間と生命』

平成16年度以前 (医保は17年度以前) の授業科目:『人間と生命 / 鉄道の教育人間学-なぜ子供は「でんしゃ」がすきなのか-』

助教・弘田 陽介

2単位

 火(9・10) 全(全)

授業の目的

近年,新しい形での鉄道ブームが巻き起こっている.従来のブームは,コアなマニア層による閉鎖的なものであったが,近年のそれは,大宮の新・鉄道博物館の開館が幅広い層からの賞賛でもって迎え入れられたことに見られるように,世間をも巻き込んだものとなっている. この授業では,この新たな鉄道をめぐる現象を,世代間の問題として考えてみたい.男の子をもつ親なら誰でも一度はこう考える.「なぜ子供は電車(乗物一般)がこんなに好きなのか」と.私の家族がそうであったように,現在の鉄道熱は,実は世代間を越えた不思議な連鎖によって成り立っている.子から親へ,そしてその親へと,従来のコアなファン層とは違う,鉄道熱がわき起こっていることについて,教育人間学の領域から考えてみたい.

授業の概要

子供の鉄道への愛を,現在の日本という視座のみならず,「近代」というタイムスパンから考察してみたい.ヨーロッパの産業革命に端を発する近代という時空間の中核となる蒸気機関は鉄道を生み,そして鉄道で運ばれる商品を生み出して行った.それは世界の時空間を一変させ,人々の生活をそれまでとはまったく異なるものへと転換させた.そのような近代の産物であり,近代を生み出した鉄道を,子供も大人も愛する.これはいかなることなのか.この不思議な愛と,その愛による大人と子供の結びつきを,鉄道黎明期の文学者・哲学者の著述や鉄道を題材とした絵本,また同じ時代に理論化された,近代の人間および社会システムを支える思想の諸研究において考察してみたい.

キーワード

鉄道,電車,メディア,経験

受講者へのメッセージ

講義形式の授業ですが,皆さんと関心を共有するために,授業内で課題発表などを行ってもらいます.課題は大変かもしれませんが,今後皆さんが専門とする学科とのつながりを見つけて行ければと思います..

到達目標

1.歴史的な文献や現代の諸事象を,一つのテーマから丁寧に読解していくこと,そして,そのようなテクストを通して,私たちが生きている歴史的状況を解釈していくことを目標とする.

授業の計画

1.イントロダクション
2.子供の経験世界
3.近代のメディア思想-Fr.キットラーの「メディア」概念より
4.鉄道の歴史 ヨーロッパ
5.鉄道の歴史 日本
6.世界のパノラマとしての鉄道
7.子供の世界経験としての鉄道
8.鉄道と映画の誕生
9.鉄道と文学 ヨーロッパ近代と鉄道
10.鉄道と文学 日本近代と鉄道
11.現在の子供世界における鉄道
12.鉄道と心理学
13.鉄道と資本主義
14.なぜ大人も「でんしゃ」が好きなのか?
15.レポートの発表と提出
16.総括授業

成績評価の方法

小発表など授業への取り組みを評価(30点).学期末レポート(70点).

再試験の有無

教科書

なし

連絡先

弘田(yhirota@ias.tokushima-u.ac(no-spam).jp)
オフィスアワー: Eメールアドレス byu00616@nifty.com