2009年度 歯学部 歯学科 学部課程 — 3年(後期)

人類遺伝学

Human Genetics

教授・板倉 光夫, 教授・親泊 政一, 教授・片桐 豊雅, 非常勤講師・高橋 永一, 非常勤講師・谷上 信

1単位

形態

講義

授業目的

1.遺伝学の基本的概念を習得する.
2.静的なゲノム一次配列情報を基にどのように動的な蛋白質の多様性が生み出されるかを解説する.さらに遺伝子発現の調節機構がどのように個体の発生と疾患に関与しているかを幾つかの例をあげて説明する.

授業概要

最近,人類遺伝学をとりまく環境の変化には目覚ましいものがあり,全ての医学が遺伝を抜きにしては語れなくなってきている.その中でも特に重要な3つが,ヒトゲノム計画,遺伝子治療,再生医学の発展である.
1991年に米国でヒトゲノム計画が開始されるとともに,日本,ヨーロッパなどでもそれに呼応する形で,ヒトの持つ全塩基配列を決定しようという計画が実行に移されることとなった.2003年には全塩基配列の決定とともに,ヒトの持つすべての遺伝子を明らかにする研究が進められている.2004年ヒトゲノムデータの精密化が完了した結果,ヒトのタンパク質をコードする遺伝子の数は従来の予測を大きく下回り22,000余と推定された.一方,最近はRNAiなどの全く新しい遺伝子発現制御メカニズムが発見され,RNA研究が推進されようとしている.
ヒトゲノム計画は単なる学問上の理由から推進されるのではなく「ヒトの設計図の解明」と「人類の繁栄に寄与すること」を目標に掲げている.これはすなわち,ヒトゲノム情報が将来の生命科学の基盤になるとの認識があり,医学生物学のみならず核酸・タンパク質解析技術,情報科学など周辺科学・技術,さらに産業など社会への影響を考えたものである.

授業方法

講義,スライド

授業場所

月曜2時限 第4講義室

注意事項

試験は学生便覧の歯学部規則を満たしている者に対して行う.

授業計画

項目内容担当
1-2.序論
DNAからなる遺伝子とこれを含む染色体の構造と機能
板倉
3.基礎遺伝学
メンデル遺伝形質の遺伝的マッピング
4.遺伝子発現
転写調節
親泊
5.遺伝子発現
転写後調節
6. 〃
翻訳後修飾
7.疾患の遺伝学
ヒトの遺伝性疾患(特に腫瘍の遺伝学)
片桐
8. 〃
分子病理学(遺伝子的変化と臨床表現型の関連)
9. 〃
分子レベルからみるがん診断研究
10.細胞遺伝学
遺伝的多様性と染色体Ⅰ
高橋
11. 〃
遺伝的多様性と染色体Ⅱ
12.ゲノム解析学
ゲノム解析学の基礎
谷上
13. 〃
ヒトのゲノム解析(先天性疾患の解析)
14. 〃
モデル動物のゲノム解析(QTL解析)
15. 〃
ゲノム薬理学,遺伝病の治療

成績評価の方法

レポートにより判定,100点満点で60点以上を合格とする.出席率が2/3以上を満たさない者は原則としてレポート提出を認めない.

再試験

行う.

教科書,プリント,参考書

(それぞれ日本語訳もでています.図書館にもあります.)

ヒトの分子遺伝学第3版 メディカルサイエンスインターナショナル

医科遺伝学(改定第2版) 松田一郎 監修 中村祐輔 辻省二 山村研一 新川詔夫 編集 南江堂

備考

日程等の詳細については別途通知する.