2009年度 医学部 医学科 学部課程 — 2年(後期)

基礎医学(1) / 生化学・生化学実習

教授・佐々木 卓也, 教授・蛯名 洋介, 教授・福井 清, 教授・木戸 博, 教授・松本 満, 教授・谷口 寿章, 教授・坂口 末廣, 教授・板倉 光夫, 教授・高浜 洋介, 教授・六反 一仁, 非常勤講師

目的

生命現象を分子レベルで理解し,種々の疾患の病因や病態を生化学的に考察する能力を養う.具体的には次のような事項を理解し身につける.
1. 蛋白質の構造と機能
2. 遺伝子の構造とその発現の仕組み
3. 遺伝子工学の基礎と臨床医学への応用
4. 細胞のシグナル伝達機構
5. 細胞の構造と機能
6. 生体侵襲と防御の生化学
7. 生化学実験技術

概要

生化学は複雑な生命現象や臨床的諸問題を分子レベルで解明しようとする学問である.最近の生命科学,特に生化学分野の進歩は目覚ましく,これまでに蓄積されてきた膨大な量の知識,情報を限られた授業時間内で学習することは残念ながら不可能に近い.したがって,学生の自主的な学習が強く望まれる.この授業では,学生が生化学の基本的な事実と理論をまず学習し,医学部学生として必要な最低限の知識を習得することを目的とする.

授業方法

講義:分子病態学分野の教員に加えて,疾患酵素学研究センター,疾患ゲノム研究センターやストレス制御医学分野などの教授がそれぞれ専門に近い分野を分担する.

実習:生化学研究の方法を習得することを目的とする.特に生命活動に重要な役割を担う蛋白質と遺伝子についての基本的な取り扱いについて学習する.

計画

大項目中項目内容
1.概 論生体分子
糖質,脂質,蛋白質,核酸,無機物,水
2. 〃細胞内小器官
核,ミトコンドリア,ミクロソーム,ペルオキシソーム,リソゾーム,ゴルジ体
3. 〃物質代謝
酵素,補酵素,消化,異化と同化,ATP,酸化と還元,糖代謝,脂質代謝,アミノ酸代謝
4. 〃核酸と遺伝子
ヌクレオシドとヌクレオチド,DNA の構造,DNA 複製,クロマチン,mRNA,rRNA,tRNA,転写,コドン,翻訳,遺伝子工学
5. 〃細胞のシグナル伝達
神経伝達,ホルモン,受容体,セカンドメッセンジャー,リン酸化酵素,アロステリック効果,酵素誘導
6.蛋白質蛋白質
蛋白質の物理化学的性質,蛋白質の構造
7.遺伝子情報高分子の構造と機能核酸ヌクレオチドの生合成と代謝
核酸,塩基,ヌクレオチドとヌクレオシド,ヌクレオチドの合成,ヌクレオチドの分解と再利用,先天性代謝異常症
8. 〃DNA の構造と機能
DNA と遺伝子,染色体とゲノム,セントラル・ドグマ
9. 〃DNA の複製と修復
DNA の複製,修復,色素性乾皮症
10. 〃RNA の合成とプロセシング及び代謝
転写,転写調節,プロセシング
11. 〃タンパク質合成と細胞内輸送
翻訳,翻訳後修飾,細胞内輸送
12. 〃遺伝子発現の制御
原核生物の遺伝子,発現の調節,真核生物の遺伝子,発現の調節
13.遺伝子工学遺伝子
遺伝子の構造,染色体と遺伝子,遺伝について
14. 〃遺伝子工学の基礎と疾病成因解明への応用について
遺伝子工学とは,Reverse Genetics,制限酵素,ベクター,cDNAと遺伝子のクローニング,優性遺伝と劣性遺伝
15. 〃分子免疫学
免疫担当細胞,免疫グロブリン遺伝子の構造とその発現,免疫グロブリンのクラススイッチ,T 細胞受容体,主要組織適合複合体
16. 〃遺伝子治療
遺伝子診断,先天性代謝異常,癌,AIDS,ウィルスベクター,体細胞遺伝子治療,胚細胞遺伝子治療,発現調節,遺伝子治療モデル,遺伝子治療の現状と将来,ゲノム機能学を用いたゲノム情報の解析と利用
17.細胞のシグナル伝達総論
細胞のシグナル伝達,物質としてのシグナル伝達物質,受容体,二次メッセンジャー,蛋白質リン酸化酵素,カルシウム,cAMP,IP3,DG
18. 〃局所ホルモン
エイコサノイド,ヒスタミン,セロトニン,NO,キニン,アンギオテンシン,エンドセリン
19. 〃循環ホルモン
ペプチドホルモンの作用機構,アドレナリン受容体とアデニル酸シクラーゼ,G 蛋白質,Ca2+ とその他の細胞内二次メッセンジャー,インスリン,グルカゴン,成長因子と癌遺伝子,視床下部下垂体ホルモン,ステロイドホルモンの生合成,ステロイドホルモンと甲状腺ホルモンの作用機構,神経伝達物質とニューロンの機能
20. 〃サイトカイン
細胞の増殖,分化とアポトーシス,細胞周期,情報の受容機構,リン酸化カスケード,ガン遺伝子と細胞内情報伝達
21.細胞の構造と機能総論
細胞内小器官
22. 〃生体膜と細胞内小胞輸送
生体膜の組成,生体膜の一般的性質,膜タンパク質の生合成,細胞内輸送と標的化,オルガネラの生合成,膜を介する生物学的反応,生理活性タンパク質の活性化,膜タンパク質の機能,タンパク質の分泌
23. 〃細胞骨格
細胞骨格,細胞外マトリックス,細胞接着分子
24.生体侵襲と防御感染応答
自然免疫応答の生化学,貪食細胞の機能,補体・炎症メデイエーター
25. 〃ストレス応答
ストレスホルモンの生化学,サイトカインとストレス応答,細胞の熱ショック応答,分子シャペロン
26. 〃活性酸素
活性酸素の種類,活性酸素産生系,活性酸素バイオロジー消去系,活性酸素による生体分子の障害,活性酸素と感染防御
27.実習

評価

1. 筆記試験を行う.2. 実習レポート採点.実習に関しては正当の理由のない欠席者は試験の受験資格を与えない.3. 出席点(3分の2以上の出席は受験資格として必要)

教科書

Molecular Biology of the Cell(5版),Garland Science 社

Molecular Cell Biology(6版),Freeman 社

連絡先

佐々木 卓也 (633-9223) sasaki@basic.med.tokushima-u.ac.jp