2009年度 薬学部 薬学科 学部課程 薬学科 — [必修] 1年(後期)

2009年度 薬学部 創製薬科学科 学部課程 創製薬科学科 — [必修] 1年(後期)

製剤学1

Physical Pharmacy 1

准教授・植野 哲

1単位

形態

講義

目的

医薬品の効果は,目的とする患部での薬理効果ばかりでなく投与部位から作用部位にいたるまでの過程からも大きな影響を受ける.医薬品を効率よく作用部位にまで到達させるためには,投与部位での吸収効率,患部へ医薬品が到達する効率,体内での医薬品の安定性などを高めねばならない.この目的を達成するためには,医薬品を目的に合致した形で製剤化しなければならない.またこれと同時に,投与しやすいこと,長期間の保存に耐えることなども満たされないと,その医薬品は実用的な価値を持ち得ない.
このような意味で製剤設計は,新しい薬理作用を持つ医薬品の開発やそれの薬理機構の究明と同等あるいはそれ以上に,重要な任務を負っている.医薬品をうまく制御して実用的な使用が可能となるように製剤計画を立て,使いやすくしかも安定性の高い剤形を開発していくのに際して,物理化学的な見地から指針を与えるのが,製剤学あるいは製剤物理化学といわれる分野である.
この講義においては,固形剤,半固形剤,液剤等の剤形と製剤化に必要な製剤材料に関する入門を学習する.代表的な製剤については日本薬局方製剤総則にも詳細が記述されているので,それも参考にしよう.この講義「製剤学1」と別途予定されている講義「製剤学2」とを学習することにより,製剤学(製剤物理化学)の分野のほぼ全域を概観できるように計画されている.

カリキュラム関連

薬学モデル・コアカリキュラムC-16-(1),(2) に相当

キーワード

物質の溶解,分散系,製剤材料,高分子

注意

薬学の研究領域は幅広いが,物理化学の基本原則を知っておくと,どの分野の研究に携わるにしても理解が容易となる.この製剤学1は基礎的な物理化学的知識を必要とするが,わずかの基本的原理を把握さえすれば全体が見渡せるようになっている.物理化学系の教科書や講義では式と図がたくさん出てきて困惑することがあるかもしれないが,これらを読み取るコツさえ分かれば理論式も概念図もこわくはない.製剤学1を学習して,図も理論式も全部征服できる自信を持てるようになろう.製剤学2とあわせれば,製剤学あるいは製剤物理化学といわれる分野のほぼ全域を学習したことになる.

目標

1.物質の溶解
  1. 溶液の濃度と性質について説明できる.
  2. 物質の溶解とその速度について説明できる.
  3. 溶解した物質の膜透過速度について説明できる.
  4. 物質の溶解に対して酸・塩基反応が果たす役割を説明できる.
2.分散系
  1. 界面の性質について説明できる.
  2. 代表的な界面活性剤の種類と性質について説明できる.
  3. 乳剤の型と性質について説明できる.
  4. 代表的な分散系を列挙し,その性質について説明できる.
  5. 分散粒子の沈降現象について説明できる.
3.製剤材料の物性
  1. 流動と変形の概念を理解し,代表的なモデルについて説明できる.
  2. 製剤分野で汎用される高分子の物性について説明できる.
  3. 粉体の性質について説明できる.
  4. 製剤材料としての分子集合体について説明できる.
  5. 薬物と製剤材料の安定性に影響する要因と安定化方法を列挙し説明できる.
  6. 高分子の構造と高分子溶液の性質について説明できる.
  7. 粉末X線回折測定法の原理と利用法について概略を説明できる.
4.代表的な製剤
  1. 代表的な剤形の種類と特徴を説明できる.
  2. 代表的な製剤添加物の種類と性質について説明できる.
  3. 代表的な製剤の有効性と安全性評価法について説明できる.
5.製剤化
  1. 製剤化の単位操作および汎用される製剤機械について説明できる.
6.製剤試験法
  1. 日本薬局方の製剤に関連する試験法を列挙できる.

計画

1.授業ガイダンス
2.溶液の濃度と性質
3.物質の溶解とその速度
4.物質の膜透過
5.界面の性質
6.界面活性剤の種類と性質
7.分散系
8.高分子
9.分子集合体
10.流動と変形
11.代表的な製剤
12.剤添加物の種類と性質
13.製剤化
14.製剤試験法
15.総復習
16.定期試験

評価

試験で評価する.

再評価

実施する.

教科書

嶋林三郎 編集「製剤への物理化学」(廣川書店)

連絡先

植野(088-633-7268, sueno@ph.tokushima-u.ac(no-spam).jp)