2009年度 人間·自然環境研究科 人間環境専攻 修士課程 選択科目 健康科学 — 1年, 2年

スポーツマネジメント特論

准教授・長積 仁

2単位

目的

スポーツ経営とはいかなるものか?スポーツマネジメントが「あらゆる方面の人々によって事業化が推進されているスポーツ,エクササイズ,ダンス及び遊戯に関連したマネジメントの理論と実際」と定義づけられ,広範囲な研究対象を捉えるために包括的な定義となっている.しかしながら,スポーツ経営の実像を捉えるためには,いささか物足らない.経営というものは,ウェーバーによれば,「経済に指向している行為の領域に関して一つの技術的な内容を言い表す範疇で,一定の労働サービス相互間及び,これと物的生産手段とを継続的に結びつけるその仕方を言い表すもの」である.すなわち,経営はあらゆる組織体の問題として現れるものであるが,その基本に据えられるのが経済的視点である.同時に,経営は本質的に,生産の諸要素(労働力,原材料,設備,資金など)を結合してこれを生産力化するという具体的な課題を持っている.スポーツ経営も,スポーツ活動という生産が持続的に営まれるようにマネジメントすることにその存在理由を見いだすことができる.ただその「生産」の捉え方が,スポーツ経営の場合はユニークである.それは,ものをつくるということに限らず,関係構築や場の創造,また人間の成長にかかわる行為を含むものである.また経済的視点に関しても全ての組織に該当しないものの,経済事情を考慮しない個人や組織が存在することもないだろうし,視点を変えれば,価値の交換は何も金銭的·物質的なものに限ったものでもないだろう.したがって,スポーツ経営とは,「する·みる·支える·創る·育てるといったスポーツ活動やスポーツと人(組織)とのかかわりを密接にすることを目的とし,諸資源の展開を図ること」と捉えることができるだろう. このクラスでは,スポーツにかかわる様々な経営現象を,単に現象だけに着目するのではなく,それらの現象を理論的に探究することを目的とする.また現象を引き起こす様々な行為に込められた「意味」を解釈するとともに,内在する問題を解明し,問題解決のための戦略的アプローチを自らプランニングし,実行するための能力を身につけることも目的とする.

概要

実践科学としてのスポーツマネジメントに関する基礎知識の習得とその応用力を身につける.

キーワード

スポーツ振興,経営現象,経営戦略,まちづくり,ソーシャル・キャピタル

注意

毎回,授業終了時に授業内容に関する意見·感想などのミニレポート(200字程度)を提出してもらう.

目標

1.「する·みる·支える·創る·育てる」といったスポーツが持つ多面性を考慮し,人とスポーツ,組織とスポーツとの関係をデザインするための幅広い視野とマネジメントに関する詳細な働きかけの両側面についての理解を深め,それを実践の場で生かすための基礎知識を身につける.

計画

1.1.スポーツ経営の主体:生産経済単位としてのスポーツ組織と組織をとりまく環境
2.2.スポーツ組織の経営資源と経営戦略:経営資源の分類と3つの戦略
3.3.スポーツ市場を構成する消費者への理解:便益から経験を追求するスポーツ消費者の行動モデル
4.4.スポーツマーケティング:マーケティングを構成する哲学と技術
5.5.スポーツ組織のマネジメント:組織デザインに重要な組織構造·組織文化·リーダーシップ
6.6.パワーブランドの本質:ブランドリレーションシップとブランドエクイティの創造
7.7.スポーツの経済的価値:健康づくりとスポーツがもたらす経済効果
8.8.地域スポーツ政策論:ヘルスプロモーションと自治体のアカウンタビリティ
9.9.コミュニティビジネス論:NPOの事業領域と組織特性を活かす知識創造の方法論
10.10.ソーシャルキャピタルとまちづくり:協働型まちづくりの推進と地域通貨の可能性

評価

評価は,「レポート」「論述試験」,そして「授業への参加意欲」の3つによって総合的に行う.

教科書

教科書:山下秋二ら編「スポーツ経営学」大修館書店(2000年)

教 材:資料を適宜配布する.

連絡先

長積(3118-1, 088-656-7286, nagazumi@ias.tokushima-u.ac(no-spam).jp)
オフィスアワー: 授業開講時間外に随時対応する. nagazumi@ias.tokushima-u.ac.jp

備考

隔年開講(H21年度開講せず)