2009年度 総合科学部 人間社会学科 国際文化コース 文化情報サブコース 学部課程 — 2年(前期)

2009年度 総合科学部 人間社会学科 国際文化コース 哲学·思想サブコース 学部課程 — 2年(前期)

2009年度 総合科学部 人間社会学科 国際文化コース 歴史·社会サブコース 学部課程 — 2年(前期)

理論社会学研究(その1)

教授・吉田 浩

2単位

目的

「事実判断と価値判断との関係について――ウェーバーとヘーゲル,マルクスの所説を中心として」と題して講義する.価値判断とは,例えば今の資本主義の現状は良いまたは悪いと評価的に判断することであり,資本主義が悪いなら,それはどうあるべきかという「当為」(Sollen)を設定することである.この事実判断と価値判断との関係について,科学は事実判断を行うことができるだけで,価値判断を与えることは出来ないと主張して,事実判断と価値判断,存在と当為(かくあるべきだという希望の原理)とを峻別したのはマックス・ウェーバーであった.ウェーバーは価値判断を行ってはならないと主張しているのではない.各人は自分の理想としての価値判断を持つべきだし,また他者の価値判断に比して,自分の理想が正しいことを他者の理想と闘って決着をつけるべきだとウェーバーは指摘するのだが,この闘争に決着をつけるのは科学ではなくて運命だというのである.これがウェーバーをしてあまりにも有名たらしめている「価値自由」(Wertfreiheit)論=「価値判断排除」論である.ところがヘーゲルとマルクスとは,これとは全く異なることを主張する.「バラは赤い」,「このストーブは熱い」といった自明な事実判断だけを科学の名の下に行っているような者を,誰も判断力ある人だとは考えず,「人間いかに生くべきか」,「21世紀の日本はどうあるべきか」という判断形式に回答を与えてこそ,科学は科学たりうるとヘーゲルはいうのである.このヘーゲルの主張はそのままマルクスに継承されている.そこでウェーバーとヘーゲル,マルクスとの間で,なぜこのような巨大な見解の差異が生じてくるかということと,いったいどちらの見解が正しいのかということが大きな問題となってくる.本講義では,このテーマを課題とし,この問題に解答を与えることを目的とする.

概要

ヘーゲル論理学のなかでもひときわ優れている彼の判断論をとことん検討することによって,ウェーバーの「価値自由論」=「価値判断排除論」を克服していきたい.

キーワード

質的判断,反省の判断,必然性の判断,概念の判断=価値判断

注意

少々難解でも,旺盛な知的関心をもってくらいついてくる学生諸君を歓迎する.

目標

1.「人生いかに生くべきか」,「21世紀の日本はどうあるべきか」という問題に回答を与えてこそ,科学はその名の値するのであり,このことを否定して科学は事実判断にのみ限定されるべきだと指摘するウェーバーの「価値自由論」の克服をめざす.

計画

1.現段階(09年2月13日)ではいまだ計画が確立していない.授業開始までには構想を確立しておく

評価

試験の際のレポートと,講義内容に対する疑問,問題点を指摘する小レポートとによって総合的に評価する.疑問,問題点の指摘に対しては講義で答える.

再評価

教科書

なし

参考資料

ヘーゲル,『大論理学』,『小理論学』等々,マルクス,『資本論』等々,ウェーバー,『職業としての学問』,『社会学・経済学の「価値自由」の意味』,『社会科学,社会政策的認識の「客観性」について』等々

連絡先

吉田(088-656-7198, yoshida@ias.tokushima-u.ac(no-spam).jp)
オフィスアワー: 水曜日 12時∼13時

備考

教職単位として受講する場合には2単位でよい