環境社会学研究
准教授・樋口 直人
2単位
目的
環境社会学は,社会学のなかでもごく最近独立した分野として認知されるようになっている.1960年代の公害問題を契機として現地調査が各地で行われ,各地での開発·環境問題に対する調査から環境社会学が形成されてきた.そのため環境社会学は現場志向が強く,十分な理論的蓄積を持っているとは言いがたい.とはいえ,そのなかから環境問題を社会学的に捉えるための視点は少しずつ形成されてきており,本講義では戦後日本と世界の環境問題を概観しつつ,それを社会学的に分析するための方法を概観することにしたい.そこでは,環境問題を学ぶ上での「常識」を身につけると同時に,我々の常識がいかに「非常識」であるかも理解することになる.
概要
環境と社会構造について,社会学の概念を用いてアプローチする.地球温暖化の現在,ごみ問題の解決策など,環境そのものを取り扱うよりは,環境問題の把握の仕方,それに対する視点の持ち方を解説する.社会的ジレンマやリスクといった重要概念に関しては,ディスカッションする機会を設けて理解を深めてもらう.
注意
社会変動研究は関連の強い科目なので,可能な限り受講されたい.
目標
1. | 環境問題について,単に現象を現象として理解するのではなく,社会学的に把握する視点を学んでほしい. |
計画
1. | 1. イントロダクション |
2. | 2.環境問題の発生要因 |
3. | (1) 環境と人口の20世紀――「生産と消費」の限界としての環境問題 |
4. | (2) 「共有地の悲劇」としての環境問題?──合理性の限界 |
5. | 3.市場経済と環境 |
6. | (1) 私たちは誰とつながっているのか――市場社会と環境 |
7. | (2) 都市型社会と内発的発展 |
8. | 4.戦後日本の公害問題 |
9. | (1) 経済成長のジレンマ――日本の公害問題 |
10. | (2) 公害問題をどうとらえるか――社会的費用と受益圏·受苦圏 |
11. | (3) 戦後日本の「成長の限界」:公共事業と環境問題 |
12. | 5.環境問題はいかにして問題になるか |
13. | (1) 吉野川可動堰問題と住民運動 |
14. | (2) 環境問題の社会的構築──ダイオキシンはいつ問題になったのか |
15. | 6.環境リスクと社会 |
16. | (1) リスク社会の誕生──「見えない危険」との闘い |
17. | (2) リスクの何が問題なのか──リスクが生むリスクのジレンマ |
18. | 7.まとめ──環境と経済と社会のトリレンマ |
評価
成績評価はレポートと出席点による.12月に提出してもらうレポートの原案にコメントをつけて返却する.受講者は,それをもとにレポートを完成させて2月に提出する.毎回提出してもらう小テストが40点,レポートの計画書が10点,レポートが50点という配分になる.評価基準やレポートのテーマ設定,書式など詳しくは初回に説明するので,必ず出席すること.
再評価
行わない
教科書
教科書は用いないが,関連する文献リストを初回に配布する.また,教科書の代わりに毎回レジュメを配布する.レポート作成にあたっては,参考文献を5点以上読んで引用することが求められる.
参考書 飯島伸子他編『講座環境社会学 全5巻』有斐閣,2001年
参考書 ウルリヒ·ベック『危険社会』法政大学出版局,1998年
参考書 大畑裕嗣他編『社会運動の社会学』有斐閣,2004年
連絡先
- オフィスアワー: 水曜日12∼13時
備考
本年度開講せず(隔年開講)