基礎医学(2) / 細菌学・細菌学実習
准教授・桑原 知巳
2単位
目的
1. 生物学の基本となる一般微生物学を学ぶとともに,真核生物と原核生物との違いを理解し,感染症におけるhost-parasite relationship のparasite 側を十分に学ぶ.
2. 正しいparasite-drug relationship を知るために細菌の病原因子を明らかにし,細菌感染症の治療のための薬剤はただ効けばよいのではないという「抗生物質の使い方の原則」を正しく理解する.
3. 実習では無菌操作を身につけ,院内感染防止の基本を理解する.また,各種検体を実習材料として用い,臨床細菌学検査の基本を学ぶ.
4. 以上の講義と実習によって,細菌感染症に対して適正に対応できるようになることを目標とする.
概要
講義 約38コマ,実習 20コマ(5回)
細菌学では,球状,桿状,らせん状の通常の細菌のほかに,マイコプラズマ,スピロヘータ,リケッチア,クラミジアなどの細菌と真菌,および細菌ウイルス(バクテリオファージ)を対象にして,分類,形態,培養,生理,代謝,遺伝などを学ぶ.さらに,病原性に主眼をおいて,病原細菌と病原真菌の感染と発症の機序を理解し,予防と治療の方法を学ぶ.各論として各種微生物の諸性状を知り,実習では臨床検体の細菌学的検査法の原理を理解し,分子遺伝学も学ぶ.
授業方法
講義:板書,プリント,スライド,ビデオ
実習:テキスト配布,顕微鏡操作法の説明,必要器具の配付,正しい無菌操作や実験操作のデモ,実習前と後でのレポート提出
目標
1. | 細菌学を学ぶ意義について述べることができる. |
2. | 真核生物と原核生物の違いについて説明できる. |
3. | 感染症の流行と病原体の発見,予防や治療の歴史について説明できる. |
4. | 細菌の分類法について述べることができる. |
5. | 細菌の基本構造と付属構造の模式図を描き,それらの機能を説明できる. |
6. | 細菌培養に用いられる培地,培養法について述べ,細菌の増殖条件,増殖曲線について説明できる. |
7. | 細菌学的検査における注意と実際の方法を説明できる. |
8. | 消毒薬の種類,適用,実際の使用法,使用上の注意について説明できる. |
9. | 突然変異について説明し,変異・癌原物質の試験法について述べることができる. |
10. | 細菌における遺伝形質の伝達方法について説明できる. |
11. | 制限酵素,プラスミドについて述べ,遺伝子操作の基本について説明できる. |
12. | ファージの形態,構造,増殖,溶原化,型別と疫学応用について説明できる. |
13. | 抗菌薬の種類と作用機序を説明できる. |
14. | 抗菌薬使用の原則について述べることができる. |
15. | 食中毒指定菌を挙げ,病因,および症状の特徴を述べることができる. |
16. | 感染成立における微生物側,および宿主側の要因について述べることができる. |
17. | 主な病原細菌の形態,染色性,培養条件,集落の特徴,生化学的性状,抵抗性,病原性,所在,細菌学的診断法,予防と免疫,治療の重要事項について述べることができる. |
18. | 臓器感染症の原因となる主な菌種名を挙げることができる. |
19. | 院内感染の対策について述べることができる. |
20. | 顕微鏡を正しく操作し,標本の観察ができる. |
21. | 実習で行った特殊染色法について具体例を挙げて,説明できる. |
22. | グラム染色標本を適正に作製し,細菌の形態を判断し,グラム陽性菌とグラム陰性菌を区別できる. |
23. | 細菌の分離培養を行うことができる. |
24. | 無菌操作を正確に,手早く行うことができる. |
計画
回 | 大項目 | 中項目 | 内容 |
---|---|---|---|
1. | 総論 | 概説 | 学習の目的,真核生物と原核生物,グラム染色 |
2. | 〃 | 歴史 | 伝染病の流行と病原体の発見,予防・治療の歴史 |
3. | 〃 | 分類 | 伝統的分類法,数値分類法,遺伝学的分類法,系統分類 |
4. | 〃 | 形態 | 形と大きさ,細菌の基本構造と付属構造,機能 |
5. | 〃 | 細菌学的検査法 | 無菌操作,分離培養,臨床検体採取時の注意 |
6-7. | 〃 | 生理 | 培地,培養法,増殖の条件,増殖曲線,発酵 |
8-11. | 〃 | 遺伝 | 突然変異,変異・癌原物質,遺伝形質の伝達,プラスミド,遺伝子操作 |
12. | 〃 | ファージ | 形態と構造,増殖,溶原化,型別 |
13. | 〃 | 消毒 | 種類,適用,使用法,使用上の注意 |
14-16. | 〃 | 化学療法 | 抗生物質の種類と作用機作,抗生物質使用の原則,臓器感染症の原因微生物 |
17. | 〃 | 食中毒 | 原因菌と症状 |
18. | 〃 | 感染 | 定着,感染,発症,ビルレンス,侵襲性,毒素産生性,内毒素,日和見感染,院内感染 |
19. | 各論 | グラム陽性球菌 | ブドウ球菌,レンサ球菌,腸球菌,ペプトストレプトコッカス |
20. | 〃 | グラム陰性球菌 | 淋菌,髄膜炎菌 |
21-22. | 〃 | グラム陰性好気性桿菌 | 緑膿菌,レジオネラ,ブルセラ,野兎病菌,百日咳菌 |
23-24. | 〃 | グラム陰性通性嫌気性桿菌 | 腸内細菌科,コレラ菌,インフルエンザ菌 |
25. | 〃 | グラム陽性有芽胞菌 | 枯草菌,炭疸菌,破傷風菌,ボツリヌス菌 |
26-27. | 〃 | 偏性嫌気性菌 | 総論,バクテロイデス,プレボテラ,ポルフィロモナス,フソバクテリウム |
28. | 〃 | グラム陽性無芽胞桿菌 | 乳酸桿菌,ビフィドバクテリウム,ユーバクテリウム,リステリア,コリネバクテリウム,抗酸菌 |
29. | 〃 | マイコプラズマとスピロヘータ | |
30. | 〃 | リケッチアとクラミジア | |
31. | 〃 | 真菌 | 二形性 |
32. | 実習 | オリエンテーション | 実習上の注意,顕微鏡の使い方,集落の観察 |
33-35. | 〃 | 各種細菌の形態と染色 | 単染色(Staphylococcus aureus,Escherichiacoli,,Pseudomonas aeruginosa),グラム染色,芽胞染色(Bacillus subtilis, Clostridium tetani) |
36-37. | 〃 | 手指消毒 | 消毒:75%エタノール,1%オロナイン(逆性石鹸),0.3%ヒビテン,陰性石鹸α-hemolytic Streptococcus, β-hemolytic Streptococcus(S.pyogenes) |
38-39. | 〃 | 細菌の鑑別・同定法 | マンニット分解,コアグラーゼ産生,ゼラチン液化,DNasa 産生 |
評価
1. 筆記試験点.2. 実習レポート
教科書
戸田新細菌学(南山堂),医科細菌学(南江堂),微生物学実習書(医歯薬出版)
連絡先
- オフィスアワー: 月・金 17:00∼18:00
備考
担当者は,桑原知巳准教授,片岡佳子講師,有持秀喜助教,今大路治之助教である.実習開始は時間厳守である.