社会医学 / 法医学
教授・西村 明儒
目的
社会をより健全に維持していくためには,適正に法律が制定され,その法律が公正に運用,執行されねばならないが,その過程において法医学的判断,助言を必要とすることも少なくない.例えば,司法面における法医鑑定などはその代表的なものであるが,行政面における監察医業務などの法医活動も必要である.これらに必要な考え方の知識や技術を付与する.
概要
社会医学としての法医学は,医学的解明,助言を必要とする法律上の案件,事項について,科学的で公正な医学的判断をくだすことによって,個人の基本的人権の擁護,社会の安全,福祉の維持に寄与することを目的とする医学である.
授業方法
講義:板書,プリント,スライド
演習:死亡診断(死体検案)書作成
実習:血液型,骨,指紋
法医解剖・死体検案:見学・補助(希望者)
目標
1. | 死後経過時間の推定ができる. |
2. | 死因の種類を説明できる. |
3. | 死体検案の意義を説明できる. |
4. | 死体検案の内容を説明できる. |
5. | 死亡診断書・死体検案書が作成できる. |
6. | 血液型(赤血球型,赤血球酵素型,血清型など)の種類を説明できる. |
7. | 個人識別(指紋,血液型,性別,年齢,身長など)を説明できる. |
8. | 法医学的物体検査(血痕,精液,毛髪,骨,歯牙など)ができる. |
計画
回 | 大項目 | 中項目 | 内容 |
---|---|---|---|
1. | 法医概論 | 法医学の概念 | 法医学の歴史,医学における法医学の位置,法医学の定義とその働き,法医学の法律上の応用,法医鑑定 |
2-4. | 法医各論 | 死体現象 | 死の定義と死の判定,早期死体現象,晩期死体現象,異常死体現象,死後経過時間の推定,生活反応 |
5-7. | 〃 | 損傷 | 損傷一般,鋭器損傷,鈍器損傷,銃器損傷,損傷の自他為,損傷死の死因 |
8-9. | 〃 | 頭部外傷 | 硬膜外,硬膜下,クモ膜下出血,脳挫傷,脳浮腫などの頭部外傷に基づく病態と死因 |
10-11. | 〃 | 交通外傷 | 交通外傷の受傷機転,特徴的外傷,交通外傷と死因 |
12-14. | 〃 | 窒息 | 窒息の定義および分類,窒息の経過および症状,窒息死の死体所見,窒息の生理と病理,縊死,絞死,扼殺,溺死,その他の機械的窒息 |
15-16. | 〃 | 異常環境下の障害 | 熱傷死,焼死,凍死,飢餓死,電気損傷,その他 |
17-18. | 〃 | 内因的急死 | 急性心臓死,脳および脳膜の疾患による急死,呼吸器系疾患にもとづく急死,消化器系疾患にもとづく急死,その他の疾患にもとづく急死,急死と体質異常 |
19. | 〃 | 新生児死 | 嬰児殺に関する法律上の問題,嬰児死体についての鑑定事項,嬰児の発育程度,生活能力,新生児の生死産別,生後の生存期間,胎児又は新生児死亡の原因,墜落産,新生児または乳児の変死 |
20-22. (講義: 1, 実習: 2) | 〃 | 死亡診断書と死体検案書 | 死亡診断書と死体検案書の違い,異常死体と死体検案書,死亡診断書の作成上の注意 |
23. | 〃 | 血液型 | 血液型の基本,赤血球型,赤血球酵素型,白血球型,白血球酵素型,血清型,HLA,DNA分析の原理・分析法,DNA 多型,親子鑑定一般 |
24-29. (講義: 2, 実習: 4) | 〃 | 物体検査 | 血痕検査,精液検査,骨の検査,歯牙の検査 |
30-33. (講義: 2, 実習: 2) | 〃 | 個人識別 | 個人同定一般,個人同定の要目 |
34-35. | 〃 | 法中毒学 | 毒物および中毒の一般,毒物の検索,鉱酸,重金属塩類,シアン化水素,シアン化合物,芳香族炭化水素,ニコチン,フグ毒,眠剤,アルコール,農薬中毒,一酸化炭素 |
評価
1. 総論・各論試験, 2. 各講義終了時のまとめ,復習テスト(レポート形式)
教科書
特に指定している訳ではないが,以下の教科書・参考書がわかりやすい.
学生のための法医学(第5版)(久保真一他:南山堂)
エッセンシャル法医学(高取健彦編:医歯薬出版)
連絡先
西村明儒 (633-7076)
備考
担当者は西村教授以外に,徳永逸夫准教授である.