社会的行為の理論 (その2)
教授・吉田 浩
2単位
目的
「社会的行為の理論と秩序問題」と題して講義をする.その目的は,タルコット・パーソンズが『社会的行為の構造』において,社会科学の世界における自発的科学革命の結果であり,秩序問題,つまり近代資本主義経済の階級的利害の対立という深刻な問題に最良に対応しうる位置にあると,その意義を強調する「主意主義的行為の理論の特質と問題点を検討することにある.「主意主義的行為の理論とは,限界主義経済学の合理的選択行動の理論に始まり,それを行為の四類型によって補完し再定式化したM・ウェーバーの行為理論へといたる理論的系譜のことである.考察の焦点は,パーソンズが強調する資本主義経済における階級的利害の対立という秩序問題を,古典派経済学,マルクス経済学,限界主義経済学,ウェーバー社会学がいかに捉え解決しようとしたかという点にあり,この考察の流れの中で自発的科学革命の最良の産物としてパーソンズによって看做された「主意主義的行為の理論」の特質と問題点とを批判的に解明していく点にある.
概要
近代主義経済に独自な階級的利害の対立という意味での秩序問題に対応する「主意主義的行為の理論」の意義と限界とを明らかとする.
キーワード
階級的利害の対立,秩序問題,古典派経済学,マルクス経済学,新古典派経済学,ウェーバーの社会的行為の理論
注意
考察の範囲が古典派経済学,マルクス経済学,限界主義経済学,ウェーバー社会学に及ぶので2年間をかけて講義する
目標
1. | 秩序問題,すなわち階級的利害の対立を中心とする社会問題を様々の社会理論がいかにして定式化し解決しようとし,そのことによってどのように社会の秩序を維持し,または再建しようとしたのかを学ぶ. |
計画
1. | 「主意主義的行為の理論と秩序の問題」に対するパーソンズの主張の問題点の確認 |
2. | アダム・スミスによる資本主義経済を構成する三大階級の理論体系内部への導入 |
3. | A・スミスによる早々たる労働価値説の放棄と三位一体的範式の立場の導入 |
4. | 三位一体的範式の一般的特徴の確認と三位一体的範式では階級的利害の対立は消滅してしまうことの確認 |
5. | 労働価値説で一環したD・リカードウと彼における分配法則の把握 |
6. | リカードウによる分配領域における調停不能な階級的利害の対立の確認と,先鋭な秩序問題の発生 |
7. | 秩序問題からみたD・リカードウ経済学の意義 |
8. | 先鋭な秩序問題発生後における理論の二類の展開方向を示しているJ・S・ミルの見解の確認 |
9. | 分配領域ではなくて生産過程にこそ階級的利害の対立=搾取を捉えたマルクス経済学の意義 |
10. | 資本の拡大再生産過程における相対的過剰人口の発生と貧困の深刻化を洞察したマルクスの資本蓄積論の意義 |
11. | 「利潤率の傾向的低落の法則」の貫徹による秩序問題のさらなる深刻化 |
12. | 経済学における限界革命と分配法則の自然法則化の試み |
13. | 限界主義経済における秩序問題の解決―カール・メンガー,A・マーシャルの理論を事例として― |
14. | 限界主義経済における秩序問題の解決―J・A・シュムペーターの理論を事例として― |
15. | 限界主義から近代社会学へ |
16. | マルクス,限界主義,近代社会学 |
評価
試験の際のレポートと,講義内容に対する疑問,問題点を指摘する小レポートとによって総合的に評価する.疑問,問題点の指摘に対しては講義で答える.
再評価
可
教科書
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