地域調査実習FI
准教授・樫田 美雄
1単位
目的
社会理論を専攻する者でない限り,何らかの経験的なデータによる実証が社会学では求められる.社会調査実習の目的は,長期的には卒業論文での実証や卒業後のリサーチに必要な手法を身につけることであり,短期的には特定のテーマでまとまった量の調査報告を執筆できるようになることである.本実習では,聞き取り調査,公私の各種文書の収集・分析,テープレコーダー,カメラ,ビデオカメラ,等緒情報機器の利用,実地調査(参与観察を含む)といった方法により,社会調査の基礎を,実習を通して学んでもらう.
概要
本年度は,認知症者と家族・介護担当者とのコミュニケーション上の緒問題の解明がメインテーマである.このテーマに関わって,参与観察,インタビュー,ビデオ分析,会話分析を総合的に活用できるようになることが,この実習の目的である.その際,調査に関する基礎的な事項は地域調査法FIで学び,具体的な情報収集やインタビュー,トランスクリプトづくり,ビデオセッションによる解析作業等をこの実習で行う.後期の目的は,前期で行った調査についての解析を本格的に進め,報告書の作成まで行い調査の一連のプロセスを経験することにある.また,実習は班に分かれて調査を進めるため,各人が責任を持って参加することが重要である.
注意
地域調査法FI・IIでは調査の理論と技法を,地域調査実習FI・IIでは実践と応用を学ぶので,同時受講を前提とする.機器の台数や実習室の制約から受講者数を制限する場合がある.授業は1年間で授業全体の計画を実行するため,なるべく通年で受講すること.
目標
1. | 年度末には班別に調査報告書(A4用紙で10-20枚程度)を執筆してもらうのでそのつもりで受講すること.トランスクリプトづくり,ビデオセッションによる解析作業など膨大な時間がかかる事が予想されるが,時間をかけただけの成果があがることは保証しよう. |
計画
1. | オリエンテーション |
2. | 会話分析の基礎:隣接対,優先構造,割り込み |
3. | トランスクリプトづくりの基礎:沈黙,同時発話,視線の秩序 |
4. | お願い状の書き方,アポイントメントの取り方 |
5. | エスノグラフィー的知識の入手法:ホームページや出版資料による情報収集 |
6. | インタビューに至るまでの道:半構造化面接の準備シートの作成等 |
7. | 練習インタビュー:インタビュー直後に複数人で記録をつきあわせる事の価値 |
8. | 本番インタビュー:臨機応変にインタビューする |
9. | ビデオ撮影の準備(1):ワイドコンバージョンレンズ,時刻合わせ,アングル |
10. | ビデオ撮影の準備(2):外部マイク,ワイヤレスマイク,マイクミキサーの使い方 |
11. | ビデオセッションの準備(1):トランスクリプトづくり,静止画切り出し |
12. | ビデオセッションの準備(2):動画クリップの編集,匿名性の確保法 |
13. | ビデオセッションのまとめ方(1):先行研究との関連1(能力判定のエスノメソドロジー) |
14. | ビデオセッションのまとめ方(2):先行研究との関連2(知識認定の相互反映性) |
15. | 認知症に関する講演会(井口高志先生=信州大学医学部=を招いて) |
16. | 夏休み合宿の企画 |
評価
出席点,発表の回数と内容により成績評価を行う.
再評価
行わない
教科書
教材に関しては,適宜コピーして輪読する.
連絡先
- オフィスアワー: 火曜日の14:00から15:00