地域調査実習FII
准教授・樫田 美雄
1単位
目的
社会理論を専攻する者でない限り,何らかの経験的なデータによる実証が社会学では求められる.社会調査実習は,卒業論文での実証や卒業後のリサーチに必要な手法を身につけ,特定のテーマでまとまった量の調査報告を執筆することを目的とする.本実習では,当事者的知識のエスノグラフィックな活用を特徴としたビデオエスノグラフィーという考え方に基づいて,総合科学的な社会調査の基礎を学んでもらう.
概要
この実習では,地域調査実習FIに引き続き,認知症者と家族・介護担当者とのコミュニケーション上の緒問題を,ビデオエスノグラフィーという考え方を手法として,検討する.相互行為の意味の発見を助けるために,オムロン社の「活動量計」を用いる.具体的には,10秒ごとの活動量の記録が24時間とれるので,ビデオのタイマーと連動して活動量の増減・多寡を比較する事で,素人とプロフェッショナルの介護活動における活動量の違い,人間関係的な近しさが活動量に与える影響などを検討していける事だろう.
注意
地域調査法FI·IIでは調査の理論と技法を,地域調査実習FI·IIでは実践と応用を学ぶので,同時受講を前提とする.機器の台数や実習室の制約から受講者数を制限する場合がある.授業は1年間で授業全体の計画を実行するため,なるべく通年で受講すること.
目標
1. | 年度末には調査実習報告書の原稿を班ごとに執筆してもらう.卒論中間発表会の主催などを通して,屋根瓦方式での教育を行う. |
計画
1. | オリエンテーション |
2. | 認知症のコミュニケーション上の緒問題としてどのようなものがあるか:検討会 |
3. | 知症のコミュニケーション上の緒問題の分析方法について:検討会 |
4. | ビデオセッションによる解析作業(1):トランスクリプトづくり,静止画切り取り |
5. | ビデオセッションによる解析作業(2):動画クリップ,イラスト化 |
6. | 補充的インタビュー調査(1):家族,ケアワーカー,ケアマネージャー |
7. | 補充的インタビュー調査(2):管理職,行政担当者,市民団体(認知症の人と家族の会) |
8. | 活動量計との組み合わせ調査(1):グラフ作りと動画との照らし合わせ |
9. | 活動量計との組み合わせ調査(2):コミュニケーション上の特徴の発見 |
10. | 中間報告会:それぞれの知見の報告と班毎の視点や進行状況の整理,次の研究に向けた課題 |
11. | 関連研究のサーベイ(1):介護保険認定調査の研究のビデオエスノグラフィー |
12. | 関連研究のサーベイ(2):施設内コミュニケーションの研究 |
13. | 卒論調査(夜勤時の認知症者サポートの研究)との連動:夜の認知症者について |
14. | 進行状況の報告会:班毎のレジュメの集約,全体の構成と教員による総論の提示 |
15. | 報告書草稿の提出,教員による講評と相互批評 |
評価
出席点,発表の回数と内容により成績評価を行う.
再評価
行わない
教科書
教科書は好井・串田編『エスノメソドロジーを学ぶ人のために』世界思想社ほか,を指定する予定.
連絡先
- オフィスアワー: 火曜日の14:00から15:00