2010年度 徳島大学 共通教育 教養科目群 — 毎年(前期)

人間と生命 / 身体文化における自己探求

Humanity and Life / The Quest for Self on the Culture of Body

平成19年度以前の授業科目:『人間と生命』

平成16年度以前 (医保は17年度以前) の授業科目:『人間と生命 / 身体文化における自己探求』

助教・弘田 陽介

2単位

 水(9.1) 全

授業の目的

自己探求と身体文化という言葉が結びつくと,一般には瞑想や座禅,武術などが想起されよう.だが,そのような事象を取り出さなくとも,人間が集中を注いできた生活の一つ一つは自己の探求であり,身体の文化である.本講義は,身体文化なき自己探求はないという観点から,生活や文化の諸場面で自我形成,人間観,世界観,成長,熟達,雰囲気といったものの意味作用を検証し,私たちの生活・文化の営みがもっている「ふくらみ」を実感することを目的とする.また,言語による意味把握を拒否するような身体文化の分析・理解の手がかりとなる身体性の「文法」(「儀礼・反復」,「模倣・差異」,「リアル・演技性」など)を紹介し,方法論として活用する.

授業の概要

講義で対象としたい身体文化とは,身体の技法,儀式,感覚や経験を通して伝承されてきた「世界との出会い方」のことである.まずこの講義の導入として,西洋近代と東洋の伝統の狭間にある21世紀の私たちの身体の風景について概観し,私たちと歴史的な身体文化の接点を探る.以下の回では,特に近代のヨーロッパと日本の文化伝承から抽出される社会論・教育論・生命論を具体的なトピックで考察していく.現代から遡及的に身体文化の思想・実践史を辿っていくことで,私たちの従来的な概念区分,例えば<身体>--<精神>,<物質>--<生命>,<自己>--<他者>に変更を迫るような文化伝承の深層を探究してみたい.

キーワード

身体文化,自己探求,歴史的人間学,身体性の「文法」

受講者へのメッセージ

講義形式の授業ですが,皆さんと関心を共有するために,授業内でいくつかのボディワークなどを一緒に行ってもらいます.恥ずかしがらずに参加して下さい.

到達目標

1.身体についての理論を丁寧に読解していくこと,そして,そのような理論を通して,私たちが生きている現代的状況を解釈していくことを目標とする.

授業の計画

1.導入① 「世界との出会い方」としての身体文化
2.導入② 西洋近代,東洋の伝統と現在の私たちの身体
3.身体文化という観点から見た西洋近代 市民革命・産業革命・読書革命
4.身体という「自然」 ルソー『エミール』において発見された身体と子供
5.近代市民社会におけるメディアとしての身体 J.C.ラヴァター観相学
6.自然=身体を統御する道徳教育 ドイツ汎愛派の身体規律論
7.「美」・「健康」と国家 国民体育とファシズムにおける身体
8.R・シュタイナーとシュタイナー教育における身体と生命
9.近代科学が覆い隠した西洋民間医療 ホメオパシー・流動体としての身体
10.中世・近世日本の身体 「日本人はどう歩いていたのか」を想像する
11.明治日本における身体文化 伝統と啓蒙の狭間における身体感覚
12.戦前・戦後の身体文化の断絶① 小津安二郎『東京物語』(1953)からの考察
13.戦前・戦後の身体文化の断絶② アメリカ文化の流入についての分析
14.身体文化のオルタナティヴ 野口晴哉・整体の思想
15.レポートの提出・発表
16.総括授業

成績評価の方法

小発表など授業への取り組みを評価(50点).学期末レポート(50点).

再試験の有無

教科書

なし

連絡先

弘田(yhirota@ias.tokushima-u.ac(no-spam).jp)
オフィスアワー: Eメールアドレス byu00616@nifty.comまで事前に連絡をください.