2010年度 徳島大学 共通教育 教養科目群 — 毎年(前期)

人間と生命 / 環境問題などと科学者・マスコミー各種の情報に惑わされない為の基礎知識ー

Humanity and Life / Insincere Science

平成19年度以前の授業科目:『人間と生命』

平成16年度以前 (医保は17年度以前) の授業科目:『人間と生命 / 環境問題などと科学者・マスコミー各種の情報に惑わされない為の基礎知識ー』

教授・小山 保夫

2単位

 月(1.2) 全

授業のタイプ

講義

授業の目的

環境問題などに関わる科学的データ(特に,生命科学分野)を正確に捉える感覚を身に付ける.科学者,大学教員やマスコミに惑わされない為には何を身に付けるか?

授業の概要

研究とは何か,論文とは何か,科学的データは扱う人間により持っている意味が変わる事がある.科学的データがどの様に生み出され,どの様なプロセスを経て伝達されるのか,それらを解説する.特に,情報を発信する側の意図を的確に捉える事は重要である.「情報」に騙されない為にはどのようにしたら良いのか.

キーワード

科学情報,研究者,大学教員,情報発信,研究論文

受講者へのメッセージ

(1)基礎の基礎から話(講義)を進めますので,文系理系,高校での履修科目など関係ありません.(2)また,この講義は「一つの見方」を示します.よって,それが「全て」では有りません.「多様な見方」があることを意識しながら,受講してください.「自分の見方」も大切に.(3)面白いニュースがある時,また,話の進め方で講義の順番は変わります.環境問題も含みますが,それを専門に扱う講義ではありません.(4)最後に,月曜日1コマ目の講義,一週間のスタートですから「元気」に出てきてください.

到達目標

1.科学的データを正確に捉える感覚を身に付ける.
2.大学で社会で騙されない為の基礎知恵を付ける.

授業の計画

1.基本的な知恵を付けよう.環境問題などに関係する生命科学情報はどの様なプロセスを経て伝達されるか. 君に届く「情報」は本当に正しいのか?
2.マスコミ発表(新聞,テレビ),学会発表,論文発表,著書(新書などの書籍)の内容の正しい解釈の仕方とは.学会発表って何?, 論文って何?,学会って,誰でも作れるの?
3.教授,医学博士とは何か.どの様に研究をしているか,その分野の研究者かを調べる方法について.誰でも医学博士になれる? ,君の将来の指導教員がどのような仕事をしているか,簡単に調べる方法とは?, その仕事の内容の評価方法とは?,「専門家」が専門以外のことを肩書きを頼りに話す可能性と,それを聞いている市民が誤解する可能性について.
4.研究者はどの様に実験を行い,論文をどの様に纏めるのか.審査制度のある雑誌の論文と審査制度のない雑誌の論文の違いは何か?, 誰も引用しない論文って意味があるのか?,大学の教員業績評価から見た「教育」と「研究」の評価はどのようなものか?
5.個体レベルの実験と細胞レベルの実験から得られるデータの違いは何か.動物実験の結果は人に当てはまるか?,実験条件次第で,良いデータも悪いデータも出すことができるか?
6.科学者の興味,マスコミの興味,市民の興味の違いはあるか.研究論文の「考察」とは何か,それをどの様に取り扱うか.市民受け,マスコミ受けする発表の仕方とは何か?
7.科学データの解釈はどのようにできるか.ある環境汚染物質を与えた動物から生まれて来た仔はほんとんどがメスだった場合,それをどのように考えるか?
8.「危険」は実験で作り出せるか?,ある環境汚染物質を生体内蓄積濃度で細胞に作用させたら細胞が死んだ.この場合,その物質は危険か?
9.環境ホルモンの「問題」は何だったのか,何なのか.最近,話を余り聞かなくなったと思わないか,今度,流行りそうな「環境話題」は何か?
10.健康食品(機能性食品?)って健康に本当に良いのか?,どの程度の証明で良いのか?,簡単に調べることができる健康食品の「危険性」.エコナの問題は何だったのか?
11.科学者(大学教員も含めて)の心の闇.次から次に出て来る論文の捏造疑惑,同じデータを使った論文のニ重投稿(例えば,日本語論文と英語論文で同じ図を使っている等),研究業績書での虚偽記載など,研究者の置かれている環境とは.
12.君らは,これから科学情報にどのように接すれば良いのか,これまでの講義から考えてみよう.
13.高学歴ワーキングプアへの道,研究者の世界は恵まれているとは限らない現実とは?ブラックな創作童話「博士(はくし)が 100 にんいるむら」の意味するところ.脳ドーピングとは何か?
14.身近な情報源のインターネット.インターネットで見る環境系,生命系のウェブサイト役に立つか,単なる落書きか?信頼できるウェブサイトはどこか?,君らが正確な情報を得る上で必要な力とは?
15.科学者(研究者,技術者)は,マスコミは,市民は社会が直面している諸問題にどうあるべきか,君の意見を聞きたい.そして,講義を受ける前と後でどのように考え方が変わったか,考えてみよう.
16.最後に,この大学で,この世の中で,我々がこれからどのように生き抜いていくか?

成績評価の方法

講義中の論議,筆記試験(小テスト,期末テスト),レポート,出席状況(試験の受験資格)などを総合的に判断します.成績の評価方法も受講生の数により変化しますが,学則に従って評価は行います.

再試験の有無

なし.

教科書

教科書を用いずに講義の際に必要なプリントは配布します.

連絡先

小山(総合科学部3号館3N06, oyama@ias.tokushima-u.ac(no-spam).jp)
オフィスアワー: メールで相談内容及び日時を打ち合わせて決定します.時間は有効に使います.