2011年度 歯学部 歯学科 学士課程 — [必修] 3年(後期)

医学細胞生物学・人類遺伝学

Human Genetics

教授・片桐 豊雅, 教授・親泊 政一, 准教授・小迫 英尊, 准教授・坂井 隆志, 准教授・真板 宣夫, 非常勤講師・高橋 永一, 非常勤講師・谷上 信

1単位

形態

講義

授業目的

1.医科学における遺伝学及び細胞生物学の基本的概念を習得する. 2.遺伝子発現調節機構がどのように個体発生や疾患に関与するかを解説する. 3.細胞内シグナル伝達ネットワークにおける蛋白質の翻訳後修飾(リン 酸化・ユビキチン化・SUMO化など)の役割について解説する. 4.静的なゲノム一次配列情報を基にどのような動的な蛋白質や機能 的RNA(小分子RNAやノンコーディングRNAなど)の多様性が生み出されるかを解説する. 5.疾患感受性や薬剤感受性などのヒトゲノムの多様性から個別化医療についても解説する.

授業概要

1953年にワトソン・クリックによりDNAの二重らせん構造が解明され,そのわずか50年後の2003年,ヒトゲノム全塩基配列が決定された.その結果,ヒトの蛋白質をコードする遺伝子の数は従来の予測を大きく下回り22000-23000個程度であり,線虫(約19000個),ショウジョウバエ(約20000個)と比較してもほとんど変わらないことがわかった.これは,遺伝子以外のゲノム領域が重要な役割を有することを意味するものである.近年,ヒトゲノムの大部分が転写されていることがわかり,その98%以上がノンコーディングRNAという蛋白質へ翻訳されずに機能するRNAであることが発見され,これまでの「DNA→RNA→蛋白質」という古典的なセントラルドグマでは説明のつかない複雑な分子機構が存在することもわかってきている.また,蛋白質の翻訳後修飾の変化が,細胞内シグナル伝達および細胞機能制御に極めて重要であることも明らかとなっている.さらに,塩基配列決定に関するテクノロジーの発展により,膨大なヒトゲノムの多様性のデータベース化が進み,遺伝学的多様性が疾患の罹患性や治療効果にどのように影響しているかも明らかになり,個別化医療が着目されてきている.このように,ヒトゲノム情報科学は将来の生命科学の基盤となり,細胞生物学や情報科学などの周辺科学や産業などの社会へ大きく影響するものである.

授業方法

講義,スライド

授業場所

月曜2時限 第3講義室

注意事項

試験は学生便覧の歯学部規則を満たしている者に対して行う.

授業計画

項目内容担当
1.疾患の遺伝学
ヒトの遺伝性疾患(特に腫瘍の遺伝学)
片桐
2.
分子病理学(遺伝子的変化と臨床表現型の関連)
3. 〃
分子レベルからみるがん診断研究
4.医学細胞生物学1
タンパク質のリン酸化を介した細胞内での情報伝達機構
小迫
5.医学細胞生物学2
肝がん発症の分子機構(主にNF-kB経路を中心として)
坂井
6.医学細胞生物学3
ユビキチン及びSUMOによるタンパク質の翻訳後修飾
真板
7.遺伝子発現
転写調節
親泊
8.
転写後調節
9. 〃
翻訳後修飾
10.細胞遺伝学
遺伝的多様性と染色体Ⅰ
高橋
11.細胞遺伝学
遺伝的多様性と染色体Ⅱ
12.ゲノム解析学
ゲノム解析学の基礎
谷上
13.
ヒトのゲノム解析(先天性疾患の解析)
14. 〃
モデル動物のゲノム解析(QTL解析)
15. 〃
ゲノム薬理学,遺伝病の治療

成績評価の方法

毎回レポートにより判定,100点満点で60点以上を合格とする.出席率が2/3以上を満たさない者は原則としてレポート提出を認めない.

再試験

行う.

教科書,プリント,参考書

(それぞれ日本語訳もでています.図書館にもあります.)

ヒトの分子遺伝学第3版 メディカルサイエンスインターナショナル

連絡先

片桐(tkatagi@genome.tokushima-u.ac(no-spam).jp)
親泊(4階 408室, 088-633-9450, oyadomar@genome.tokushima-u.ac(no-spam).jp)
高橋(連絡先未登録)
谷上(連絡先未登録)
小迫(088-633-9414, kosako@ier.tokushima-u.ac(no-spam).jp)

備考

日程等の詳細については別途通知する.