基礎医学(2) / 薬理学・薬理学実習
教授・玉置 俊晃
目的
薬物療法の基礎知識を習得することを目標とする.このためには,化学物質としての薬の性質および生体内動態を理解することが不可欠である.より適切な薬物療法を行うためには,人体の恒常性を維持するための各種調節機構(生理)を理解し,さらに,疾病時の各種調節機構の異常(病態生理)を理解したうえで,その調節機構を修飾する各種薬物の性質を理解することが必要である.
さらに,薬物によりゆり動かされる生体側の反応を正確に把握・比較・評価する事により,生体の複雑な調節機序を解明できる可能性を秘めている.すなわち,薬は薬物療法の手段としての価値のみならず,薬が生体調節機構を解明する道具として有用であることを理解し,生命機構の解明の大きな武器である薬を生命科学研究の道具として使用する基礎能力を養うことを目標とする.
概要
薬理学は,薬と生体との相互作用の結果起こる現象を研究し,その機構を明らかにすることを目的とした科学である.高等動物における生体の特徴は,恒常性を維持するために調節機構が発達していることであり,病態とはその調節機構の障害により引き起こされた状態といえよう.薬の多くは生体に作用してこれらの調節機構をゆり動かすことができるので,乱れている調節機構を正常方向に動かすことも可能であるとともに,正常生体でも薬によるゆり動かしの結果,極めて興味深い現象が引き起こされる.前者が,薬物療法の基礎になり,また,後者は生体の調節機構を解明する有力な手段として利用される.これらのことから解るように,薬理学の授業においては,化学物質としての薬の性質によりゆり動かされる生体の生理および病態生理機能を十分に理解しなければならない.医学部における薬理学授業の主目的は,正しい薬物療法を行うための基礎知識を習得することにある.
医師をめざす学生がより良い薬物療法を行えるように自ら思考する訓練のために薬理学実習を行う.すなわち,実験動物を使用したin vivo での実習をおこない,薬物が引き起こす多くの生命現象の変化を直接観察し,問題点や疑問点を討論する過程において,自主性・創造性を養うことに努める.
授業方法
プリント・パワーポイント・討論
薬理学実習:in vivo およびin vitro の実験方法を用いた薬理学実習を行う
目標
1. | 薬物の生体内動態(吸収・体内分布・代謝・排泄)を理解し,薬物の薬理作用と副作用の関係が説明できる. |
2. | 薬物投与方法を列挙し,それぞれの薬物動態を説明できる. |
3. | 薬物の生体膜通過に影響する因子を説明できる. |
4. | 薬物・毒物の濃度反応曲線を描き,その決定因子を説明できる. |
5. | 薬物の受容体結合と薬理作用との定量的関連性を理解し,活性薬と拮抗薬を説明できる. |
6. | 薬物・毒物の用量反応曲線を描き,有効性・中毒性・致死量の関係を説明できる. |
7. | 薬物の評価におけるプラセボの意義を説明できる. |
8. | 薬物の蓄積,耐性,アナフィラキシー,依存,習慣性や嗜癖を説明できる. |
9. | 主な薬物アレルギーを列挙し,予防薬と対処法を説明できる. |
10. | 中枢神経作用薬(向精神病,抗うつ薬,パーキンソン治療薬,抗けいれん薬,全身麻酔薬)の薬理作用を説明できる. |
11. | 自律神経作用薬(アドレナリン作用薬,抗アドレナリン作用薬,コリン作用薬,抗コリン作用薬)の薬理作用を説明できる. |
12. | 循環器作用薬(強心薬,抗不整脈薬,降圧薬)の薬理作用を説明できる. |
13. | 呼吸器作用薬(気管支拡張薬)の薬理作用を説明できる. |
14. | 消化器作用薬(潰瘍治療薬,消化管運動作用薬)の薬理作用を説明できる. |
15. | 利尿薬の薬理作用を説明できる. |
16. | ステロイド薬および非ステロイド系抗炎症薬の薬理作用を説明できる. |
17. | 化学物質としての薬の性質と起源についての知識を習得する.薬物および生体内活性物質の構造を修飾することにより,より有効な薬物が開発できることを理解する. |
18. | 実験動物を使用した実習により,薬物が生体の調節機構におよぼす作用および他の薬物との相互作用を観察・評価することができる. |
計画
回 | 項目 | 担当者 |
---|---|---|
1-2. | Introduction (1), (2) | 玉置俊晃 |
3-4. | Pharmacodynamics (1), (2) | 〃 |
5-6. | Drug Receptor (1), (2) | 〃 |
7-8. | Drug metabolism (1), (2) | 冨田修平 |
9-10. | Pharmacokinetics (1), (2) | 玉置俊晃 |
11-18. | Autonomic Drugs (1), (2), (3), (4), (5), (6), (7), (8) | 〃 |
19-20. | レニン-アンギオテンシン (1), (2) | 〃 |
21-22. | 糖尿病治療薬 (1), (2) | 阪上浩 |
23-24. | Diuretic Agent | 玉置俊晃 |
25-27. | 腎臓に関する薬物 | 〃 |
28-29. | Drugs for CNS (1), (2) | 木平孝高 |
30. | Ca antagonist | 池田康将 |
31. | Vasodilator | 〃 |
32. | Cardiotonics | 〃 |
33. | Na & K channel Blocker | 〃 |
34. | 消化器作用薬 (1), (2) | 石澤有紀 |
35. | 血液に作用する薬 | 玉置俊晃 |
36-37. | 生理活性アミンと薬 | 〃 |
38-39. | 呼吸器作用薬 (1), (2) | 〃 |
40-41. | 痛み止め | 〃 |
42-49. | 薬理学実習 | |
50. | 薬理学最終試験 |
評価
1. 講義終了時の試験 2. 実習レポート
教科書
Basic & Clinical Pharmacology 10th edition Edited by BG. Katzung (Lange Medical Books/McGrawHill)
連絡先
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