2011年度 総合科学部 人間社会学科 アジア研究コース 日本文化研究サブコース 学士課程 — 2年(通年), 3年(通年)

2011年度 総合科学部 人間社会学科 アジア研究コース アジア研究サブコース 学士課程 — 2年(通年), 3年(通年)

日本文学基礎研究II

准教授・堤 和博

4単位

目的

日本文学のうち,平安時代の文学作品を読解する際,また,資料として扱う際の方法及び留意点を,『紫式部日記』を主たる具体例として取り上げて講義する.他の作品にもなるべく多く言及する予定である.平安時代に限らず,古典の文学作品は,近現代の作品とはかなり違った性格を備えているので,留意する点も多種多様に亘る.それらをいくつかのテーマに分けて講じていく.また,平安時代の日本文学に触れるとすれば,当然文字で書かれたものを媒体とすることになる.そしてそれは,印刷技術が発達する近世までは,もっぱら写本ということになるのである.学生諸君が今まで接してきた古代の文学作品は,教科書にせよ注釈書にせよ,活字に直されたものであったはずである.それらのものは,その注釈書等を執筆した学者が各自の見識に基づき,写本(または,版本)をもとにして活字化したものなのである.本授業では,活字化されたものではなく,写本(または,版本)を資料として古代の文学作品を読解する力を養成することも目指す.よって,変体仮名を読む練習も含まれる.

概要

日本古典(特に平安時代)文学研究の基礎

キーワード

日本古典文学,古代,解釈,紫式部,紫式部日記

注意

この授業においては,多く変体仮名を読むことになる.変体仮名を読む練習は夏休み中に各自で行うこと.(練習するにあたっての留意事項等は,夏休み前に指示する )

目標

1.日本古典(特に平安時代)文学を研究する上での基礎的な知識·能力を得る.3,4年次に日本古典文学を専攻する予定のない学生については,日本古典文学を学ぶことによって,知的な能力の向上を目指す.

計画

1.本の伝来について-基礎的な書誌学·伝本発生の由来等(1)-『枕草子』を中心に
2.本の伝来について-基礎的な書誌学·伝本発生の由来等(2)-『土左日記』を中心に
3.本の伝来について-基礎的な書誌学·伝本発生の由来等(3)-その他平安時代の主要な作品をを中心に
4.本の伝来について-基礎的な書誌学·伝本発生の由来等(4)-『紫式部日記』邦高親王本を中心に
5.本の伝来について-基礎的な書誌学·伝本発生の由来等(5)-『紫式部日記』黒川本を中心に
6.注釈書を参考にする場合の注意(1)-『蜻蛉日記』下巻の一部読解
7.注釈書を参考にする場合の注意(2)-『蜻蛉日記』下巻諸注釈書の比較検討
8.作品の成立について-近現代の作品とは違った成立過程(1)-『竹取物語』を中心に
9.作品の成立について-近現代の作品とは違った成立過程(2)-『竹取物語』と「斑竹姑娘」の比較検討
10.作品の成立について-近現代の作品とは違った成立過程(3)-『紫式部日記』の構成
11.作品の成立について-近現代の作品とは違った成立過程(4)-『紫式部日記』の構成と成立
12.作品の成立について-近現代の作品とは違った成立過程(5)-『源氏物語』第一部の構成
13.作品の成立について-近現代の作品とは違った成立過程(6)-『源氏物語』第一部の構成と成立
14.作品の成立について-近現代の作品とは違った成立過程(7)-成立論の意義
15.レポートの書き方の注意事項
16.変体仮名読解の注意事項
17.レポートの講評
18.レポートの書き換え
19.作家論-平安時代の作家について研究する方法·資料等(1)-全般的説明
20.作家論-平安時代の作家について研究する方法·資料等(2)-藤原清輔を例として
21.作家論-平安時代の作家について研究する方法·資料等(3)-紫式部の前半生
22.作家論-平安時代の作家について研究する方法·資料等(4)-紫式部の後半生
23.作家論-平安時代の作家について研究する方法·資料等(5)-『紫式部日記』を作家論観点から読む 日記体部分
24.作家論-平安時代の作家について研究する方法·資料等(6)-『紫式部日記』を作家論観点から読む 述懐部分
25.作家論-平安時代の作家について研究する方法·資料等(7)-『紫式部日記』を作家論観点から読む 書簡体部分
26.作家論-平安時代の作家について研究する方法·資料等(8)-『紫式部日記』を作家論観点から読む まとめ
27.作家論-平安時代の作家について研究する方法·資料等(9)-平安時代の和歌史
28.作家論-平安時代の作家について研究する方法·資料等(10)-和泉式部の和歌を例として
29.解釈法-古典作品を解釈する基本的な方法へ向けて-黒川本『紫式部日記』の読解
30.解釈法-古典作品を解釈する基本的な方法(1)-言葉の帰納的解釈
31.解釈法-古典作品を解釈する基本的な方法(2)-用例の集め方
32.解釈法-古典作品を解釈する基本的な方法(3)-主として辞書を用いる際の注意事項

評価

数度に亘って課すレポート(期末に試験を行うこともある)

再評価

教科書

中野幸一編『紫式部日記·付紫式部集』(武蔵野書院)

秋山虔編『黒川本紫日記(上)』(笠間書院)

秋山虔編『黒川本紫日記(下)』(笠間書院)

参考資料

『原典をめざして-古典文学のための書誌』(笠間書院)

『日本古典籍書誌学辞典』(岩波書店)

連絡先

堤(4-404, tsutsumi@ias.tokushima-u.ac(no-spam).jp)
オフィスアワー: 月曜日 10時10分から11時55分