2008年度 総合科学部 人間社会学科 アジア研究コース アジア研究サブコース 学部課程 — 3年(後期), 4年(後期)

2008年度 総合科学部 人間社会学科 アジア研究コース 日本文化研究サブコース 学部課程 — 3年(後期), 4年(後期)

アジア文学演習I (後期)

肩書不明・安東 諒

2単位

目的

アジア人の精神形成の根幹となっているものを,文学に固定せずより広く考えてみたい.文学作品の解読を主として,仏教をも参考にする.インド大乗仏教の二大学派の龍樹による中観派の中道(空)思想と無着·世親兄弟による唯識瑜伽行派の唯識思想を概説する.文学作品は,文章の創作と批評に関する綜合論である劉勰の『文心雕龍』(ブンシンチョウリョウ)を解読する.

概要

中国文学作品(主に六朝時代の作品)の解読

キーワード

中観派(龍樹),唯識派(無着·世親),意識と存在,劉勰,文心雕龍

先行科目

アジア文学基礎研究(2006後期)

注意

「アジア文学基礎研究」を2年生の時に受講していることが望ましい.

目標

1.二年生を受講者対象とした「アジア文学基礎研究」の思想·宗教の内容を一段深めたものを読解し,文学作品は,中国文学史において,内容と形式の一致の最高形態と言われる四六駢儷文の魅力の一端にでも触れることを一応の到達目標とする.

計画

1.中観派と唯識派の提唱する論を今流に言えば,空の思想は存在の相互関係論であり,唯識の主思想は潜在意識=深層意識論である.全てのものは相互に縁起(因縁生起)する関係的存在であって,固定膠着した独立不変の恒常的実体ではない,ということが空の考え方である.瑜伽(yoga)行の実践から発見した心身論として,人には顕在意識の六識(眼·耳·鼻·舌·身·意)の他に潜在意識として第七識のマナ識(無意識的自己執着心)と第八識のアーラヤ識(無意識的生命持続心)なるものがあると唯識派は言う.文学作品は,文章の形式美を究極まで追究して産み出された四六駢儷文の代表的作品とされる劉勰の『文心雕龍』を解読する.500年ごろ書かれた本書は,文学の創作と批評に関する理論書で,西洋のギリシャのアリストテレスの『詩学』やローマのホラティウスの『詩論』などと比較される.西洋の二書は詩についての単論だが,『文心雕龍』は文学の創作と批評の綜合論である.文章の表現について,多角的考察をするための一助として本書を解き読みたい.読みが創造的な読みになることを目指して.
2.前期·後期の講義内容を分書しないが,前期は『文心雕龍』原道篇の解読を主として,後期は神思篇の解読を主とする.大乗仏教の二大学派については解読と併行して講義する.

評価

授業内容の理解度を見るための数回の小レポートと各自輪番の演習の達成度と期末試験を評価の主対象とする.

再評価

行わない.

教科書

古典文学作品のテキストはコピーして随時配布する.

参考資料

『唯識のすす め』─―仏教の深層心理学入門─―岡野守男(NHKライブラリー)

『「覚り」と「空」』──インド仏教の展開──竹村牧男(講談社現代新書)等

連絡先

安東(連絡先未登録)