ライフステージ臨床栄養学
Clirical Nutrition in Life Stages
目的
ヒトのライフステージに特異的な疾患について,栄養の摂取,補給およびこれに伴う内部環境,栄養素の代謝変化の特徴を理解することによって,ライフステージに特有な発病の背景および疾患の「病態」を理解する.そのうえで,健康の増進,疾患の予防または治療の臨床栄養学的基盤および対策に関して学習する.
計画
1. | 小児の疾患(出生前期,新生児期,乳児期,幼児期,学童期,思春期)
- 小児は成人を小型にしたものではない.小児は成長,発達していることが特徴であり,成人に比して栄養素代謝が活発に行われている.近年は成人特有の生活習慣病が小児に多く見られることからの予防に小児期疾患および小児への対策について学習する.
疾患としては,先天異常,配偶子病,胎芽病,胎児病,先天性代謝異常症(アミノ酸,糖質,脂質異常症),新生児低血糖および低カルシウム血症,発育発達障害,栄養障害,ビタミン欠乏症,小児糖尿病,肥満症,神経性食欲不振症,貧血等がある.
|
2. | 妊婦・授乳婦の疾患
- 母体は胎児を保護し,胎児の発育を助けるために,血液の増加,乳腺の発達,子宮の増大を伴ないながら栄養素を貯蔵する.これらすべての変化は母体が摂取する食物によって補給される.胎児の発育のみならず,母体の健康にも重大な影響を及ぼし,妊娠の異常や分娩時の障害を招く病態について学習する.
疾患としては,栄養不良,肥満,つわり・妊娠悪阻,妊娠中毒症,貧血,糖尿病等が重要である.これらの疾患では,母体の衰弱,流産,胎盤早期剥離,早期破水,早産,分娩の遷延,分娩時の多出血,産褥期の回復の遷延,母乳分泌不良と胎児の臓器発育不良,低出生体重児,胎児死亡などのリスクとなる.
|
3. | 高齢者の疾患
- 栄養不良が大きな問題となる.栄養不良は行動上の問題,骨格筋萎縮,創傷の遅延,呼吸機能低下,冠動脈疾患,感染症等のリスクを高め,さらに生命予後を悪化させる.欠食や食事内容の偏り,それに加えて睡眠不足や過度のストレス等が長期間続くと栄養の摂取不足を呈して,最終的には顕著な栄養不良症状を示すようになる.その背景としては身体上の障害からおこる摂食困難だけでなく,社会経済上のさまざまな要因がある.加齢による臓器重量および機能低下,慢性疾患の治療薬による食欲低下,ビタミン・ミネラル欠乏症,胃腸障害,食欲不振,体重低下,アルコール濫用,知的能力および情動障害,咀嚼障害,感覚器障害,生活活動能力の低下,老化などが栄養不良の要因となる.さらに,食物摂取に直接影響する大きな要因として咀嚼能力の低下が重要である.咀嚼能力は,歯の残存数,義歯の適合度,咀嚼筋力,唾液量などに規定される.これらの高齢者の健康や活動力を低下させる要因について学習する.
|
教科書
「臨床病態栄養学」(武田英二,編著)文光堂,2004年
「栄養療法・輸液」(武田英二,編)看護のための最新医学講座,中山書店,2002年
「高齢者の食と栄養管理」(渡邊孟,武田英二,奥田拓道,編)建帛社,2001年