2010年度 工学部 光応用工学科 昼間コース — [必修] 4年(前期)

光応用工学計算機実習

Optical Science and Technology Computation Exercise

教授・原口 雅宣, 講師・森 篤史, 講師・手塚 美彦, 准教授・河田 佳樹, 助教・岡本 敏弘, 肩書不明・岡 博之, 講師・山本 裕紹

1単位

目的

計算機はあらゆる分野で不可欠であり,光技術者として計算機を用いた問題解決能力を養うことは重要である.ここでは,光学材料,光デバイスから光情報システムまでの光技術に関する基本的な課題に取り組み,計算機を有効に活用できる能力を高めることを目的とする.

概要

以下の 課題1及び課題2から各1題選択して計2題行う.各課題は7週間で実 施し,4年前期の前半7週間に課題1,後半7週間に課題2の実習を行う. 課題1 (a) 半導体レーザの設計と基本特性評価:光関連の技術に欠くことのできない半導体レーザの基本構造として,光共振器や光導波路がある.これらの素子の設計•特性評価に必要なプログラムの作成とシミュレーションを通じて,光の波としての性質とその利用方法の基本的概念を理解する.また,適当な半導体レーザ素子を設定し,パルス動作時の光出力特性等のシミュレーションから,レーザの基本特性を理解する.<関連の深い講義:光デバイス1,光導波工学,レーザ工学基礎論>.課題1 (b)分子シミュレーション入門: 材料設計や物性予測に不可欠な手段となっているモンテカルロ(MC)法と分子動力学(MD)法のうち,強磁性体や相分離のモデルとして知られている二次元イジングモデルのMCシミュレーションの実習を行う. <関連の深い講義:材料統計熱力学2>.. 課題1 (c) スペクトルシミュレーション: さまざまな波長の光を用いて分子の電子状 態や構造 を明らかにする分子分光学において計算機が重要なツールとなることを理解 すること を目的とする.計算機の発達により,量子化学的計算から分子に特有のスペ クトルを 理論的に求めることが可能となった.ここでは,スペクトルシミュレーショ ンが実際 のスペクトルの解釈に必須である電子スピン共鳴(ESR)分光法において,与 えら れた パラメータからスペクトルを計算により求めるプログラムを作成する.<関連の深い講義:分光分析学>. 課題2 (a)光演算処理の基礎: 光情報機器や光計測の基礎となる光演算について,計算機を用いて理解することを目的とする.具体的には,干渉縞の強度分布,レンズによるフーリエ変換を扱う.これらの計算を通して,光演算処理を理解し,班別に応用課題に取り組む.応用課題については,最後に発表会を行う.<関連の深い講義:光演算処理,信号処理>. 課題2 (b)コンピュータのグラフィックスの基礎: コンピュータのグラフィックス機能を利用してプログラミングによるコンピュータグラフィックス画像生成の基本的な技術を習得することを目的とする.特に,現実感のあるグラフィックス表現を可能にするレイトレーシングアルゴリズムを習得する.<関連の深い講 義:画像処理,幾何光学>. 課題2(c) ディジタル信号処理の基礎: 計算機技術の発展に伴い,ディジタル信号処理技術は音声や映像などのあらゆる分野で必要とされる基礎技術となっている.ここでは,ディジタル信号処理の基本となる離散フーリエ変換とその高速演算アルゴリズムである高速フーリエ変換を習得することを目的とする.<関連の深い講義:画像処理,信号処理>.

キーワード

計算機プログラミング,光学材料,光デバイス,光情報システム

注意

実習はすべて出席すること. • レポートを提出しなければ成績評価の対 象外となるので注意すること. • 限られた時間内で実習内容を理解して課題をこなす ことは困難であるので,予習をすること. • 受講者は上記の関連授業科目を履修して いることが望ましい.

目標

1.光学材料,光デバイスから光情報システムまでの光技術に関する基本的な課題に取り組み,計算機を有効に活用できる能力を高め,光技術者として計算機を用いた問題解決能力を養うことを目標とする. 以下に,各課題に対する到達目標を示す.
2.課題 1(a) (担当: 原口 雅宣,岡本 敏弘) .A.与えられた数式の計算結果を求めるプログラムを作成し,妥当な計算結果を得る.B.計算において,物理量の「単位」の概念が重要であることを理解する.C.光共振器の特性,導波モードや光閉じ込め係数が半導体レーザの特性に与える影響について,計算結果を通じて理解する.D.レーザのパルス発振動作(あるいは変調動作)で,レーザの光出力が時間的にどのように変化するのかを計算結果を通じて理解する.
3.課題1(b)(担当: 森篤史) 計算機上で乱数を発生させ, その性質を把握した上でそれを使えるようにする.強磁性的イジング模型を例に, 次のシミュレーションを実行させる:(1)エネルギーが減少する方向への系の発展.(2)メトロポリス法に基づいての, ボルツマン重み付きのサンプリング.また,(3)それらの一般的な物理的意味を理解する.
4.課題1(c)(担当: 手塚 美彦,岡 博之) 与えられた法則 に従ってスペクトルを計算し,それをディスプレイ上に再現できる.
5.課題2(a) (担 当: 山本 裕紹) ・計算機を活用するような問題設定を行なうこと.・設定した問題を解決するアルゴリズムを構築すること.・プログラムの目的,内容,工夫点を発表できること.
6.課題2(b,c) (担当:河田佳樹) ・実装されているグラフィック関数の理解及び使用できること.・2次元のグラフィックス関数がプログラミングできること.・レイトレーシングの基礎技術がプログラミングできること.・工夫を凝らした仕様案に基づきプログラミングできること.

計画

1.オリエンテーション
2.課題1(a)1.Cプログラミングの復習.課題1(b)1.Cプログラミングの復習.
3.課題1(a)2.繰り返し計算,判定文(光共振器の共振周波数,光子寿命).課題1(b)2.乱数の復習,判定文・繰り返し文(モンテカルロ法による積分).
4.課題1(a)3.光共振器特性とレーザ特性の関係,レポート.課題1(b)3.標示,繰り返し文と総和の計算(強磁性イジング模型のエネルギー計算)
5.課題1(a)4.収束計算,数値積分法(モード分散式,電界強度分布).課題1(b)4.絶対零度の強磁性イジング模型のシミュレーション.レポート
6.課題1(a)5.導波モード特性と半導体レーザ特性の関係,レポート.課題1(b)5.ボルツマンサンプリング(有限温度のイジング模型のシミュレーション)
7.課題1(a)6.連立微分方程式の数値解法(レート方程式).課題1(b)6.強磁性イジング模型の相転移点(キュリー点).レポート.
8.口頭試問·レポート,課題1(a)7.レーザのパルス動作特性,レポート.
9.課題2(a)1.数値計算の基礎.課題2(b)1.ウィンドウ作成およびグラフィックス関数.課題2(c)1.ソフトウェア仕様書,実装,テストについて
10.課題2(a)2.干渉縞の強度分布の算出.課題2(b)2.2次元グラフィックスの作成.課題2(c)2.離散時間信号の生成ソフトウェア仕様書作成
11.課題2(a)3.フーリエ級数展開の実行.課題2(b)3.2次元グラフィックスの応用演習.課題2(c)3.離散時間信号の生成ソフトウェア実装,テスト
12.課題2(a)4.フーリエ変換の実行とグループ課題の設定.課題2(b)4.3次元グラフィックスの基礎.課題2(c)4.離散フーリエ変換ソフトウェア仕様書作成
13.課題2(a)5.グループ別ソフトウェア実装.課題2(b)5.陰面消去と陰影付けの応用演習.課題2(c)5.離散フーリエ変換ソフトウェア実装,テスト
14.課題2(a)6.グループ別ソフトウェアテストと説明資料作成.課題2(b)6.鏡面反射と全体照明モデルの応用演習.課題2(c)6.高速フーリエ変換ソフトウェア仕様書作成
15.口頭試問·レポート課題2(a)7.グループ課題発表審査会.課題2(b)7.作品製作.課題2(c)7.高速フーリエ変換ソフトウェア実装,テスト
16.予備日

評価

実習は課題1及び課題2から各1題選択して計2題行う.1課題50点満点と し,総合評価60点以上を合格とする.一度でも欠席したり,レポートを提出しなければ成績評価の対象外となる.実習中における積極性,理解度及び,口頭試問の解答, レポートの提出状況と内容を総合して評価する.レポートの内容が採点基準に満たない場合,再提出を求めることがある.定期試験は実施しない.平常点は,実習中における積極性,理解度及び,口頭試問の解答,実習レポートの提出状況と内容を総合して評価する. 以下に, 各課題に対する評価方法を示す. 課題1(a) (担当: 原口 雅宣,岡本 敏弘)平常点(30%)およびレポート(60%),演習に対する積極性(10%)を評価する.レポートは,課題の重要性や解法の特徴とオリジナリティを説明しているか,適切な図表を使用しているか,読者に理解してもらう工夫があるか,考察を行っているかを重視して採点する.課題に対して「確からしい計算結果」を求めているわけではない. 課題1(b)(担当: 森篤史) 出席(フェィス.トゥー.フェィスの指導の結果)とレポートの割合を6対4として評価する. 乱数の扱いは自習の初期の段階でフェィス.トゥー. フェィスの指導を行なう. 他についても同様に, 実際にパターンの発展を見ながら達成度を評価するが, 時間内に課題をこなせなかった場合はプリントアウトされたもので評価する. 課題1(c)(担当: 手塚 美彦,岡 博之) 平常点 30%,実習中における理解度20% 提出されたレポートの内容50% 課題2(a)(担当:山本 裕紹) 成績評価:授業への取り組み(40%),グループ課題のレポート発表による報告(60%)で評価する. 課題2(b) (c) (担当: 河田 佳樹) 実習中における理解度20%,提出されたレポート内容80%.提出レポートには以下の内容が含まれ,その詳細について口頭で説明できることが必要である. • 構築したアルゴリズムについての説明及び,ソフトウェア仕様書•ソフトウェア仕様書に基づいたプログラム及び,実行例. • 作成プログラムのマニュアル

JABEE合格

JABEE合格は単位合格と同一とする.

JABEE関連

光応用工学科の学習•教育目標「(B)基礎的実験技術の習熟と創造性」に関連する.

対象学生

開講コース学生のみ履修可能

教科書

課題1(a) (担当: 原口 雅宣,岡本 敏弘) 配付プリントならびに光デバイス1で用いたテキスト. 数値計算に関する参考書が必要となるので,各人図書館等を利用すること.

課題1(b)(担当: 森篤史) プログラミング言語および演習の教科書

課題1(c)(担当: 手塚 美彦,岡 博之) 機器分析のてびき(2)(化学同人)

課題2(a) (担当: 山本 裕紹) 三田典玄:実習C言語(アスキー出版局) 森口繁一,伊理正夫,武市正人編:Cによる算法通論(東京大学出版会)

課題2(b),(c) (担当: 河田 佳樹)中前栄八郎,西田友是:3次元コンピュータグラフィックス(昭晃堂)E.O. Brigham著,宮川洋,今井秀樹訳:高速フーリエ変換(科学技術出版社)

参考資料

教科書•配布プリント

光デバイス1&2のテキスト

光導波工学のテキスト

プログラミング言語及び演習のテキスト

・Turbo Cによる3Dグラフィックス 山岡 祥 著,・CによるCGレイトレーシング 千葉則茂・村岡一信 共著

連絡先

原口(光棟209, 656-9411, haraguti@opt.tokushima-u.ac.jp)
岡本(光棟207, 656-9412, okamoto@opt.tokushima-u.ac.jp)
森(光棟410, 656-9417, mori@opt.tokushima-u.ac.jp)
手塚(光棟307, 5027, ytezuka@opt.tokushima-u.ac.jp)
岡(光棟311, 5022, okah@opt.tokushima-u.ac.jp)
山本(光棟411, 656-9427, yamamoto@opt.tokushima-u.ac.jp)
河田(光棟508, 656-9431, kawata@opt.tokushima-u.ac.jp)

備考

1.1. • 実習はすべて出席すること. • レポートを提出しなければ成績評価の対象外となるので注意すること. • 限られた時間内で実習内容を理解して課題をこなすことは困難であるので,予習をすること. • 受講者は上記の関連授業科目を履修していることが望ましい.
2.成績評価に対する平常点と試験の比率:定期試験は実施しない. 平常点は,実習中における積極性,理解度及び,口頭試問の解答,実習レポートの提出状況と内容を総合して評価する.