2010年度 薬学部 薬学科 学部課程 薬学科 — [必修] 3年(前期)

2010年度 薬学部 創製薬科学科 学部課程 創製薬科学科 — [必修] 3年(前期)

基礎医療薬学5

Basic Clinical Pharmacy 5

教授・際田 弘志

1単位

形態

講義

目的

薬効や副作用を薬物の体内動態から定量的に理解できるようになるために,薬物動態の速度論的解析に関する基礎的知識と技能を修得する.

概要

薬物の体内動態の速度論的解析の有用性を紹介するとともに,種々の解析法について解説する.さらに,TDMの有用性についても解説する.

カリキュラム関連

薬学モデル・コアカリキュラムC13-(5) に相当

先行科目

基礎医療薬学1

関連科目

基礎医療薬学4

注意

必ず復習をすること.

目標

1.薬動学
  1. 薬物動態に関わる代表的なパラメーターを列挙し,概説できる.
  2. 薬物の生物学的利用能の意味とその計算法を説明できる.
  3. 線形 1- コンパートメントモデルを説明し,これに基づいた計算ができる.
  4. 線形 2- コンパートメントモデルを説明し,これに基づいた計算ができる.
  5. 線形コンパートメントモデルと非線形コンパートメントモデルの違いを説明できる.
  6. 生物学的半減期を説明し,計算できる.
  7. 全身クリアランスについて説明し,計算できる.
  8. 非線形性の薬物動態について具体例を挙げて説明できる.
  9. モデルによらない薬物動態の解析法を列挙し説明できる.
  10. 薬物の肝および腎クリアランスの計算ができる.
  11. 点滴静注の血中濃度計算ができる.
  12. 連続投与における血中濃度計算ができる.
2.TDM (Therapeutic Drug Monitoring)
  1. 治療的薬物モニタリング(TDM)の意義を説明できる.
  2. TDM が必要とされる代表的な薬物を列挙できる.
  3. 薬物血中濃度の代表的な測定法を実施できる.
  4. 至適血中濃度を維持するための投与計画について,薬動学的パラメーターを用いて説明できる.
  5. 代表的な薬物についてモデルデータから投与計画をシミュレートできる.

計画

1.薬物速度論とバイオアベイラビリティー(90分1回)
  • 薬物治療や医薬品開発における薬物速度論の意義と,薬物の有効性・安全性を定量的に評価する指標であるバイオアベイラビリティーについて解説する.
2.クリアランスとAUC(90分1回)
  • 薬物速度論において最も重要なパラメータである血中濃度時間曲線下面積(AUC)とクリアランスの概念と算出方法について解説する.
3.線形1-コンパートメントモデル(90分1回)
  • 薬物速度論において最も基本的な数理モデルである線形1-コンパートメントモデルについて解説し,そのモデルに基づいて,静脈投与後の血中濃度,尿中排泄データの解析法について解説する.
4.0次吸収(90分1回)
  • 線形1-コンパートメントモデルに基づいて,0次吸収(点滴静注)の場合の血中濃度データの解析法について解説する.
5.1次吸収(90分1回)
  • 線形1-コンパートメントモデルに基づいて,1次吸収(経口投与等)の場合の血中濃度データの解析法について解説する.
6.反復投与(90分1回)
  • 線形1-コンパートメントモデルに基づいて,繰り返し投与を行った場合の血中濃度データの解析法について解説する.
7.その他のコンパートメントモデル(90分1回)
  • 線形1-コンパートメントモデルが不合理な場合の解析法として,非線形1-コンパートメントモデルや線形2-コンパートメントモデルについて概略を説明する.
8.生理学的薬物速度論(90分1回)
  • 医薬品開発や個別治療に応用されている生理学的なパラメータ(各臓器の固有クリアランスや血流速度等)に基づいた数理モデルの意義や解析法について解説する.
9.モーメント解析法(90分1回)
  • 数理モデルに基づかない速度論的解析法の一つであるモーメント解析法の意義や解析法について解説するとともに,コンパートメントモデルとの対比についても解説する.
10.その他の解析法とTDM(90分1回)
  • 多数のデータを統計処理することにより個々人の薬物動態パラメータを推測する母集団薬物速度論や薬理効果の発現を速度論的に解析するファーマコダイナミックスについて解説するとともに,患者の血中濃度データ等から,薬物速度論に基づいてより適切な投与設計を行うTDMについても解説する.

評価

試験,宿題,レポート,出席など総合的に評価

再評価

実施する.

教科書

薬剤学(第4版),瀬崎,木村,橋田編,廣川書店

連絡先

薬学部薬物動態制御学研究室hkiwada@ph.tokushima-u.ac.jp
オフィスアワー: 随時