地域調査法ⅡF
准教授・樋口 直人
2単位
目的
この講義では,前半で調査に関する基本的な知識と考え方を講義し,後半では移民の宗教とネットワークに対する調査の代表的なものをいくつか取り上げ,その問題設定と具体的な調査方法との関連をみていくこととする.
概要
樋口がこれまで行ってきた調査事例を適宜取り上げつつ,調査の目的・方法・マナーなどについて解説する.後半では,以下の2つを中心に講義と購読により授業を進めていく.①移民の組織に関する代表的な研究を紹介し,日本での代表的な文献を読む.ライフヒストリー論の問題関心とその方法論的特徴を解説し,購読を通じて理論と調査を架橋する.②エスノグラフィ的な移民研究を紹介し,移民現象を生身の人間の織り成す舞台として捉えるアプローチ方法を学んでもらう.古典的な研究を購読することで,その面白みと実際の方法論について学んでいく.
注意
前期と連続した内容であるため,基本的に後期のみの受講は認められない.どうしても受講したい場合にはあらかじめ相談されたい.
目標
1. | 調査に際して必要な素養を身につける. |
計画
1. | オリエンテーション |
2. | 移民研究の調査手法と代表的な研究成果:どのような方法により何を明らかにするのか? |
3. | 移民調査の目的:移民―組織―近隣住民の何をどのようにして明らかにするのか |
4. | 移民調査の方法:ネットワーク論,エスノグラフィ,インタビュー |
5. | 調査倫理:対象者との関係,データ使用でのトラブル,移民調査におけるトラブルの事例 |
6. | 質的調査における調査者の立場:対立する争点をめぐる羅生門問題,分析者の位置取りなどの解説 |
7. | 調査の実例と方法:講師自身の調査と早稲田大学グループによる調査手法とインタビューデータから解説 |
8. | 移民に対する世論調査データ:データの種類と入手方法,活用方法の解説 |
9. | 海外における移民への態度の調査:ISSPデータの紹介 |
10. | 調査の失敗の事例:広田康生『エスニシティと都市』の調査手法と問題点の解説 |
11. | 移民ネットワークのフィールドワーク(1):樋口直人他『国境を越える』購読と調査手法の解説 |
12. | 移民ネットワークのフィールドワーク(2):樋口直人他『国境を越える』購読と分析手法の解説 |
13. | モスクへのアプローチ(2):早稲田大学グループの調査の概要と方法論の解説 |
14. | モスクへのアプローチ(3):早稲田大学グループによるラポール構築に関する解説 |
15. | 全体のまとめ |
評価
少人数での参加型授業であるため,出席と授業中の報告で評価する.
再評価
行わない
教科書
樋口直人他『国境を越える』青弓社,好井裕明・宮内洋編『当事者をめぐる社会学』北大路書房
連絡先
樋口(1210, 088-656-7200, vyw03403@nifty.ne(no-spam).jp)
備考
隔年開講,平成25年度開講