2011年度 総合科学部 社会創生学科 環境共生コース 学士課程 — [選択] 3年(後期)

2011年度 総合科学部 社会創生学科 公共政策コース 学士課程 — [選択] 3年(後期)

2011年度 総合科学部 社会創生学科 地域創生コース 学士課程 — [選択] 3年(後期)

2011年度 総合科学部 総合理数学科 数理科学コース 学士課程 — [選択] 3年(後期)

2011年度 総合科学部 総合理数学科 物質総合コース 学士課程 — [選択] 3年(後期)

2011年度 総合科学部 人間文化学科 国際文化コース 学士課程 — [選択] 3年(後期)

2011年度 総合科学部 人間文化学科 心理・健康コース 学士課程 — [選択] 3年(後期)

共生社会論

准教授・樫田 美雄

2単位

目的

社会学の立場から社会福祉論・共生社会論を論じる.現代社会は福祉社会である.しかし,「社会リアリティ」の変化にともない,「連帯」の在り方が変わってきている.幅広い市民的連帯がリアリティを失い,「選ばれた人間」の中での「連帯」が「公正」であるように思われてきている.その感覚のもとで許される「個人のニーズ」だけが,「社会のニーズ」に転換を許容されるようになってきている.また,「生産主義社会」から「消費社会」に変化する中で,「労働倫理」の意義は低下し,クリエイティブな労働者になれない場合は,「立派な消費者」になることが次の目標となってきている.かつて,労働に不適であることが福祉の対象者の条件であったが,いまや,消費者としては障害者も平等に扱われるようになり,最終排除対象者は,意志をもたぬもの,意志を適切に表示できないものになってきている.この流れの先に,共生社会がある.共生社会の光と影を共に見つめていきたい.同時に,社会福祉の現代社会的基盤を理解しよう.

概要

社会学の立場から考える社会福祉論と共生社会論.社会のニーズと個人のニーズ.資本主義を支えるものとしての福祉社会.消費社会への変化の意味.労働のフレキシビリティの増大の意味.近代的労働倫理(勤勉さ,従順さ・・)を守意味の変化.グローバライゼーション.産業の機械化.代替不能性の高い労働と低い労働.これらのことを道具に,現代社会的側面から福祉社会を考える.

キーワード

福祉社会学,社会政策,援助,共生,セルフヘルプグループ,インタビュー論,社会福祉と現代社会

先行科目

市民活動論

注意

教科書は生協に取り寄せる予定(定価:1700円).古本でもよいが,必ず入手すること.また,参考書の一部は効果だが読み甲斐がある.出欠確認は毎回行う.とりわけ,初回のオリエンテーションは重要なので,けっせきしないようにせよ.欠席者には理由を等.なお,全学共通教育では,「ボランティア論(木曜5・6限,前期)が,関連科目である.なお,受講学生人数にもよるが,複数会の小論文執筆が課せられることを覚悟して欲しい.大学での学習成果は,書いたレポートの数にほぼ比例すると思われるからだ.だいたいのことを書いて満足するのではなく,質のものを志して書いてほしい.また,ダイソー等での買い物などの宿題も課せられる.人数がすくなければ,裁判所見学(以下に福祉の対象者と被告の層が重なっているかの実地確認作業)も行う.日本の現状(消費社会化,低所得労働者のアンダークラス化=ジグムント・バウマン=)を身をもって看取してもらう必要があるからだ.

目標

1.現代社会を学ぶことと,社会福祉を学ぶことがどのように繋がっているのか講義する.
2.より具体的には,(1)現代社会の構造と自分の人生選択の困難さを結びつけて理解する.
3.(2)現代の困難さに,一定の合理性があることを理解したうえで,アルターナティブな未来を構想できるようになる
4.アルターナティブな未来(例:労働と切り離された収入)がはらむ問題に気づくことができる.

計画

1.樫田によるイントロダクション.現代社会論として福祉と共生をとらえる.
2.消費社会とグローバリゼーション.労働はどう変わってきているのか.
3.ウエルビーイングタウン:社会福祉って何だろう.
4.社会的ニーズと個人的ニーズの問題.対立?.個人的ニーズの社会的構成?.
5.障害者福祉のしくみ
6.高齢者福祉のしくみ
7.児童福祉のしくみ
8.虐待について(児童虐待と高齢者虐待).虐待とエスノセントリズム.
9.新しい貧困について.ニュープアとアンダークラス(ジグムント・バウマンの主張)
10.犯罪と疾病と社会福祉.裁判所見学(人数的に可能な場合).
11.在宅医療の問題を考えよう
12.セルフヘルプ・グループ論.ヨブ記から考える.
13.準備レポート草稿の班別検討会.考え抜く態度の錬成(1)
14.準備レポート講評.総合科学と現代社会.『フーコーの穴』を題材に.
15.最終レポート草稿の班別検討会).考え抜く態度の錬成(2)
16.最終レポート講評.総合科学と社会福祉.『<生>の社会学』を題材に.

評価

平常点(出席を含む)+レポート(20%,80%の比率)※準備レポートはコメントを付けて返却し,点数上は最終レポート(第2回目のレポート)のみ加点対象とする見込み.

再評価

行わない

教科書

岩田正美ほか著1999『ウエルビーイングタウン 社会福祉入門』有斐閣

参考資料

ジグムント・バウマン著1998=2008『新しい貧困-労働,消費主義,ニュープア』青土社.

藤村正之著2008『<生>の社会学』東京大学出版会

井上俊・長谷 正人編2010『文化社会学入門』ミネルヴァ書房

『福祉社会事典』弘文堂

斉藤純一編『講座・福祉国家のゆくえ5 福祉国家:社会的連帯の理由』ミネルヴァ書房.

三重野卓・平岡公一編『福祉政策の理論と実際:福祉社会学研究入門 改訂版』東信堂

石川准・倉本智明編,2002,『障害学の主張』,明石書店.

メイナード著,樫田・岡田訳2004『悪いニュースをどう伝えるか』勁草書房.

杉野昭博『障害学 理論形成と射程』東京大学出版会.

重田園江『フーコーの穴 統計学と統治の現在』木鐸社.

連絡先

樫田(工学部キャンパスSVBL棟3階プロジェクト研究室1に常駐.1号館南棟1階1S19 はときどき., 088-656-9512, kashida.yoshio@nifty.(no-spam)com)
オフィスアワー: 火曜日_14:00から15:00