人間と生命 / 罪と悪-旧約聖書の世界-
Humanity and Life / Evil and Sin: Old Testament Views
平成19年度以前の授業科目:『人間と生命』
平成16年度以前 (医保は17年度以前) の授業科目:『人間と生命 / 罪と悪-旧約聖書の世界-』
教授・吉田 昌市
2単位
水(3・4) 全(全)授業の目的
自己を含めたこの世界に悪が存在するのは紛れもない事実であるが,この事実をどのように受けとめ,どのように理解し,対処するかは人により,思想的立場によってまちまちであろう.また,何を悪であると考えるかも,人により時代によって,けっして一様ではない. この授業では,西洋の人々が「人間と悪」「世界と悪」という問題についてどのようなことを考えてきたのかを顧み,ヘブライ的・キリスト教的世界観の一端にも触れる. 倫理(人間の生き方)が単に個人の問題に尽きるのではなく,世界(社会)と自己,自己と世界(社会)という大きな視座で問われるべき問題であることを,知ってほしい.
授業の概要
この講義では,主として旧約聖書の中から「悪」や「罪」に関わるいくつかのテクストを選び,それを精読する. 特に旧約聖書『ヨブ記』に焦点をあて,この難解とされる書を理解し,その現代的意味を示すことを目指す. なお,西洋との比較のために,日本や東洋の場合(主に仏教の思想)に言及することもあるだろう.
キーワード
苦難(悪),応報思想,神,神の似すがた
到達目標
1. | 『ヨブ記』とそれが提起する問題について,自分なりの見方を持つようになること. |
授業の計画
1. | 今後の講義について,あらましを説明する. |
2. | 旧約聖書『創世記』:イスラエル民族の歴史を簡単に解説し,その後,旧約聖書『創世記』の創造物語を読む. |
3. | 旧約聖書『創世記』(その二):第二の創造物語を取り上げる.特に,蛇の誘惑とアダムとエバの堕罪に焦点を当てる. |
4. | 旧約聖書『創世記』(その三):「カインとアベル」の物語を取り上げる. |
5. | トマス『神学大全』より「天使の罪」:禁断の果実を食べることがどのような意味で「罪」「悪」なのかを,トマス『神学大全』の「天使の罪」の議論を参照しながら考える. |
6. | 旧約聖書『ヨブ記』:プロローグとエピローグ,「ヨブ最初の独白」を読み,『ヨブ記』の問題を提示する. |
7. | 『ヨブ記』その二:「ヨブ最後の独白」「神との対決」と読み進み,テクストについて一通りの解説をするとともに,『ヨブ記』解釈上の問題点をも示す. |
8. | 『ヨブ記』その三:「ヨブ最後の独白」「神との対決」と読み進み,テクストについて一通りの解説をするとともに,『ヨブ記』解釈上の問題点をも示す. |
9. | 『ヨブ記』その四:新しいテクストも提示して,『ヨブ記』の解釈を行う. |
10. | 『ヨブ記』その五:新しいテクストも提示して,『ヨブ記』の解釈を行う. |
11. | 『ヨブ記』その六:新しいテクストも提示して,『ヨブ記』の解釈を行う. |
12. | ドストエフスキー『カラマーゾフの兄弟』とエリ·ヴィーゼル『夜』より:近現代のヨブ的苦難,ジェノサイドの衝撃 |
13. | ドストエフスキー『カラマーゾフの兄弟』とエリ·ヴィーゼル『夜』より(続き):近現代のヨブ的苦難,ジェノサイドの衝撃 |
14. | 旧約聖書に帰って:聖書の宗教は,はたしてジェノサイドの衝撃に耐えることができるのか?こうした観点から,旧約聖書の思想を吟味する作業をしてみたい. |
15. | 成績評価のために使用する. |
16. | 授業全体の総括にあてる. |
成績評価の方法
おおよその目安として:授業への取り組み方(30%)+何度か行う予定の小テスト(20%)+学期末の試験(50%)
再試験の有無
再試験は一度だけ行うが,不合格者全員が自動的に再試験を受験できるわけではない.
教科書
適宜プリントを配布し,参考文献も講義の中で紹介する.
連絡先
- オフィスアワー: 水曜12時から13時