2011年度 徳島大学 共通教育 教養科目群 — 毎年(後期)

生活と社会 / 相互行為分析と現代社会

Living and Society / Interaction analysis and contemporary society

平成19年度以前の授業科目:『生活と社会』

平成16年度以前 (医保は17年度以前) の授業科目:『生活と社会 / 相互行為分析と現代社会』

准教授・樫田 美雄

2単位

 水(3・4) 全(全)

授業のタイプ

講義

授業の目的

相互行為分析は,社会学の方法であり,1960年代の米国西海岸に始元をもつエスノメソドロジーの影響を強く受けた方法である.それは,人々の相互行為を会話や動作の連続体(シークエンス)であると見なして,詳細に検討する学問であり,録音録画機を用いた「会話分析」との組み合わせにようって大きく発展した.現在では,医学・看護学・教育学・工学らの諸学問と連携して大きな成果を上げている.本講義は,この新しい学問をとにかく最低限イメージできるようになるまで実践的に紹介する.イメージするのに必要な限りで,コンピューター実習もおこなう(データの加工能力がレポート作成に必要なため)

授業の概要

講義(ビデオ・音声教材を用いる)が中心.ただし,会場の確保ができれば,途中で2回は,コンピューター教室で,トランスクリプト(転写文)作成や,動画編集の作業を行いたい.芸能活動において,どうして1人の演者が複数人を演じることができているのか(cf.落語)という問題を実際の落語をみながら考える.お笑い芸人が人間の相互行為分析能力を活用していること(cf.アンジャッシュのDVDを活用!)を隣接対の用語を用いて解明する.マジシャンがマジックを可能にしている状況を観客とマジシャンの相互支え合い関係として分析する.医療現場でひとびとがいかにお互いに対する期待をボディを通して表示しているのかをビデオを通して確認する.教室で教員と生徒がどのようにコミュニケートしているかをビデオだけでなく,当事者インタビューを通して解明する.これらの実例を見せたあとで,学生自身に事例を探索させ,分析を可能な限り共同で行い,レポートに結実させる.盛りだくさんでたいへんだが,楽しい知的エンターテイメントとなるよう努力したい.

キーワード

相互行為,エスノメソドロジー会話分析,発話の秩序,隣接対

受講者へのメッセージ

自分や社会を振り返り,物の見方を変えたり豊かにするような講義を目指したい.そうした意味での「教養」を身につけたい学生の受講を歓迎する.

到達目標

1.日常生活をふりかえりながら,社会の仕組みを考える能力を身につける.
2.トラブルや闘争もまた,社会秩序のひとつの形であることを理解する.
3.言語論的転回や手続き論的転回という現代思潮の最新状況の概況を知る

授業の計画

1.オリエンテーション.参加は必須.欠席者には後日その理由を問う
2.アンジャッシュのDVDを見ながら,そこに我々の社会の秩序性が活用されていることを見る
3.放送スタジオの相互行為分析.息を吸うことと吐くことの相互行為的意味.
4.居酒屋の相互行為分析.選択肢が前提となった相互行為.適切であること.
5.信頼に底が抜けていることの確認.ウイナーの交信モデルと相互行為.
6.サンチアゴに雨が降る,というラジオ放送の意味.意味はどこに生じるのか.
7.病院に行くことのエスノメソドロジー(救急車を呼ぶ,病院で診察をうける・・)
8.トランスクリプトの作り方の説明1(田中2004に基づいて実習する)
9.トランスクリプトの作り方の説明2(配布のDVDに基づいて実習する)TA活用
10.視線の秩序.配布のDVDに基づいて動画分析の練習.
11.医療の相互行為分析(悪いニュースの伝え方,自閉症の秩序・・)
12.学生が探索したデータによる相互行為分析検討会(1)
13.学生が探索したデータによる相互行為分析検討会(2)
14.施設で暮らすことの相互行為分析(待つこと,待たせること:作業療法の現場から)
15.教育の相互行為分析(高等教育における少人数教育,幼児のスイミングスクール現場から)
16.全体のまとめ

成績評価の方法

授業中の出席と発言,授業内での小テスト,最後のレポートによって評価する.半ば実習のようにして進めていくので,通常の講義とは異なることを予め理解してほしい.詳しくは初回に資料を配付して説明するので,必ず出席すること.

再試験の有無

教科書

教科書は使用しない.

参考書

好井 裕明・串田 秀也編『エスノメソドロジーを学ぶ人のために』世界思想社,2010

山崎 敬一編『実践エスノメソドロジー入門』有斐閣,2004

ダグラス・メイナード著,樫田美雄・岡田光弘訳『医療現場の会話分析』勁草書房.

好井・山田・西阪編『会話分析への招待』世界思想社

平 英美・中河 伸俊編『新版 構築主義の社会学』世界思想社

連絡先

樫田(工学部キャンパスSVBL棟3階プロジェクト研究室1に常駐.1号館南棟1階1S19 はときどき., 088-656-9512, kashida.yoshio@nifty.(no-spam)com)
オフィスアワー: 火曜日14:00∼15:00atSVBL棟3階プロジェクト研究室1