2008年度 総合科学部 人間社会学科 地域システムコース 学部課程 — 2年(前期)

地域調査実習DI

准教授・矢部 拓也

2単位

目的

この授業では社会調査の手法を,実習の形式で習得することを目的とする.そこでは,特定のテーマを設定し,調査票を用いたサーベイ調査(アンケート調査),個別の団体調査•インタビュー調査,既存の統計資料調査など,多様な手法を用い,対象となる社会現象を記述,分析し,報告書を執筆することが目指される.今年度は,以下のようなテーマで実習を行おうと考えている. 55年体制崩壊後の地方政治は,相乗り首長の圧勝が続く安定した政局とはうってかわって,さまざまな変動の方向が一気に噴出する状況を呈している.東京,大阪での青島幸男と横山ノック知事の誕生.新潟県巻町を皮切りとする住民投票運動の成功.岩手,宮城,三重,鳥取,高知県での「改革派」知事の成功.栃木,千葉両県での無党派知事の誕生.長野,東京におけるポピュリズム的政治手法の突出.これらの現象は,一見すると相互に矛盾をきたしているようにみえる.けれども,これらは55年体制が蓋をしてきた第二の近代化に伴う社会変動を体現する,新たな対立軸の所在を予示しているのではないだろうか.我々はこのような問題意識にもとづき,知事選挙での投票行動に関する4年間の調査プロジェクトを行ってきた.初年度である2004年には,徳島市と高知市における知事選・市長選の投票行動に関する調査を行い,2005年度は東京都における石原知事支持および衆議院選挙選挙の投票行動に関する調査(東京調査1),2006年度は長野市を対象とする田中康夫知事の再選/新知事の当選に関する調査,2007年度は大津市を対象とした嘉田滋賀県知事誕生に関しての投票行動分析,東京都における石原知事再選に関する投票行動.本年度はこれまで蓄積されたデータの再分析および追加調査を行い,地方政治の比較を行いたいと考えている.

概要

地方政治の比較社会学

キーワード

社会調査,政治社会学,投票行動

注意

地域調査法DI·IIでは調査の理論と技法を,地域調査実習DI·IIでは実践と応用を学ぶので,同時受講を前提とする.機器の台数や実習室の制約から受講生を制限する場合がある.授業は1年間で全体の計画を実行するので,通年での受講を望みます.加えて,報告書作成や分析においてEXxcelやSPSSといったソフトを使うために,社会統計基礎論(豊田),社会情報分析法(矢部)を既に受講,もしくは本年度受講していることを望みます.

目標

1.地域調査の実践を通じて,サーベイ調査の企画,実施,集計,分析,報告書の作成が行えるようになる.

計画

1."前期は,社会調査法に関しての文献を読み,社会調査の方法を学びます.後期は,これまで行ってきた調査結果の検討(論文の検討およびデータの再分析による質問項目の妥当性,信頼性の検討)を行い,最終的には報告書にまとめます.

評価

平常点(実習への取り組みの様子)が基本になる.的確なテーマや仮説の設定,論理的な分析と説得力ある結果の解釈,調査作業への積極的貢献などがポイントになる.試験は実施しない.

再評価

行わない

教科書

社会調査方法論に関する教科書

ボーンシュテット/ノーキ『社会統計学-社会調査のためのデータ分析』海野道郎/中村隆監訳,ハーベスト社,1990,2900円

SPSSの動かし方に関する参考書

馬場浩也『SPSSで学ぶ統計分析入門』東洋経済新報社,2002,2800円

連絡先

矢部(1228, 088-656-9311, yabe@ias.tokushima-u.ac(no-spam).jp)
オフィスアワー: 木曜日12時∼13時

備考

隔年開講,今年度開講せず