2011年度 徳島大学 共通教育 教養科目群 — 毎年(後期)

歴史と文化 / 健康と環境の文化人類学

History and Culture / Anthropological Studies of Health and Human Ecology

平成19年度以前の授業科目:『歴史と文化』

平成16年度以前 (医保は17年度以前) の授業科目:『歴史と文化 / 健康と環境の文化人類学』

肩書不明・内藤 直樹

2単位

 水(3・4) 全(全)

授業の目的

ヒトは環境に生物学的・文化的に適応することで汎地球的に分布するに至ったユニークな生物である.それゆえヒトは,多様な環境のもとで固有の文化を練り上げてきた.人間存在の総体を理解するためには,ヒトの生物としての側面と文化的存在としての側面を過不足無く把握する必要がある.本講義の目的は,健康と環境にかかわるヒトの文化誌(史)を学ぶことを通じて,異文化研究の意義やその方法論を理解することである.それは先端科学技術の浸透やグローバリゼーションのなかで大きな変更を迫られている,われわれの環境,身体や他者との関係の将来像を考える手がかりにもなる.

授業の概要

本講義では,自然人類学と文化人類学の幅広い研究領域の中から,ヒトの健康と環境に関するテーマを取り上げる.具体的にはフィールドワークにもとづくアフリカの事例を中心に, 食料獲得や疾病への対処に関する世界の諸文化を紹介する.同時に, それらに関わる身近な文化や現代的な諸問題も紹介し,比較の視点を養う.

キーワード

文化相対主義,フィールドワーク,生業経済,疾病と病い,生態人類学

受講者へのメッセージ

文理融合の視点から人間を総体として把握するために, 歴史や文化を理解することが果たす意義について考えてもらいたい.

到達目標

1.「文化をもつ生物」であるヒトとそれをとりまく世界を総体的に捉えるためには,その生物学的特性と文化的特性の双方を把握する視点が重要であることを理解する.また異文化研究の意義や方法論を理解することを通じて,自己理解を深める.

授業の計画

1.イントロダクション:人類学とは何か?
2.霊長類社会の社会と文化:文化研究へのいざない
3.婚姻・家族・コミュニティ:チンパンジー・ゴリラ・ヒトの社会
4.人種と民族:人類学の歴史
5.アフリカ狩猟採集社会の生業と文化:分配と平等社会
6.アフリカ牧畜社会の生業と文化:家畜管理と交渉
7.アフリカ農耕社会の生業と文化:過少生産と平準化
8.人類史と疾病:マラリア・天然痘・糖尿病
9.病いをめぐる文化:奇病クールーとスローウィルスの発見
10.健康な身体とは何か:FGMと文化相対主義
11.先端医療技術と文化:死・健康・家族観の変化
12.食卓から世界へ:グローバリゼーションと食糧問題
13.人口・エネルギー・廃棄物:人類の未来史
14.生物多様性保全と先住民社会:伝統的知識とマイノリティ
15.期末試験
16.総括

成績評価の方法

授業への取り組み状況(20%),期末試験の点数(80%) を総合して行う.ただし,評価割合の目安は括弧内のパーセントである.

再試験の有無

教科書

毎回,プリント資料を配布する.またDVD,パワーポイント等の視聴覚教材を使用する.

参考書

以下の参考書のほかは,講義中に随時紹介する.

『医療人類学』A.McElroy & P.K.Townsend(著)丸井英二・他(訳),大修館書店,1995.

『人類生態学』大塚柳太郎・他 (著) 東京大学出版会,2002.

『近代化のフィールドワーク』作道信介(編)東信堂,2008.

『生態人類学を学ぶ人のために』秋道智弥・他(編)世界思想社,1995.

『医療人類学のレッスン』池田光穂,奥野克巳(編)学陽書房,2007.

連絡先

オフィスアワー: 水曜12:00-13:00