2011年度 工学部 生物工学科 昼間コース — [選択] 2年(後期)

生物物理化学1

Biophysical Chemistry 1

講師・玉井 伸岳

2単位

目的

化学平衡の取り扱い方および化学反応の動力学的な側面に関する講義を行い,それらの物理化学的な概念について修得する.

概要

化学反応を物理化学的に理解するためには,平衡状態で成り立つ静的条件と,平衡状態までの反応速度や反応機構に関する動的条件の両方を検討する必要がある.本講義の1∼4回では,化学平衡が成立するための条件を熱力学的に導出し,平衡定数の意味や平衡定数への熱力学変数の効果を解説する.5∼12回では,反応速度や反応の次数の定義について講述し,単純な反応に対する微分方程式の立て方およびその解である速度式の導出について解説する.さらに速度式から得られる化学反応の重要な特徴・性質について解説する.13∼15回では,複雑な反応の速度や反応機構に関する理論について簡単に紹介する.

キーワード

化学平衡,平衡定数,反応速度,速度式,速度定数

要件

物理化学1,2の履修を前提として講義する.

注意

講義中に理解度確認のため2回の中間試験を行う. 授業を受ける際には,2時間の授業時間毎に 2時間の予習と2時間の復習をしたうえで授業を受けることが, 授業の理解と単位取得のために必要である.

目標

1.化学平衡の条件と平衡定数の意味について熱力学的に理解する.
2.反応速度の取り扱いを理解し,重要な反応速度式の導出ができる.
3.生物物理化学が関与する生命倫理的問題を理解する.

計画

1.化学平衡(1)Gibbs自由エネルギーの極小
2.化学平衡(2)熱力学的平衡定数と平衡定数の計算
3.化学平衡(3)外部条件に対する平衡の応答
4.化学平衡(4)いろいろな系への応用
5.中間試験1(到達目標1の一部評価); 化学反応速度(1)反応速度,反応の次数
6.化学反応速度(2)1次反応,2次反応
7.化学反応速度(3) 2次反応,平衡に近い反応
8.化学反応速度(4)速度定数と平衡定数,化学緩和,半減期
9.化学反応速度(5)速度定数の温度依存性
10.中間試験2(到達目標2の一部評価); 化学反応速度(6)速度式の解釈,素反応
11.化学反応速度(7)逐次素反応,律速段階,定常状態近似
12.化学反応速度(8)酵素反応,酵素阻害,生物物理化学の生命倫理的問題
13.複雑な反応の速度(1)連鎖反応と爆発
14.複雑な反応の速度(2)重合の速度論,活性錯合体理論
15.反応の分子動力学(1) 活性錯合体理論
16.期末試験(到達目標全ての一部評価)

評価

出席率80%以上で,到達目標3項目が各々60%以上達成されている場合をもって合格とする.達成度は,到達目標1,2は中間試験(50%),期末試験(50%)で,到達目標3はレポート(100%)で評価する(出席点は加えない).

JABEE合格

成績評価と同じ.

JABEE関連

本学科教育目標(A),(C),(D)に対応する.

対象学生

開講コース学生のみ履修可能

教科書

P. W. Atkins著(千原秀昭・中村亘男訳)「アトキンス物理化学(上)9章,(下)25 ~ 27章」東京化学同人

参考資料

R. A. アルバーティ著/妹尾 学·黒田晴雄訳「物理化学(上)および(下)」東京化学同人

慶井富長著「反応速度論 第2版」東京化学同人

連絡先

玉井(化学·生物棟609号室, 088-656-7520, tamai@bio.tokushima-u.ac(no-spam).jp)
オフィスアワー: 水曜日 16:20-17:50

備考

1.原則として再試験は実施しない.
2.授業計画1-4が到達目標1に対応し,到達度は中間試験1および期末試験の成績で評価する.授業計画5-15が到達目標2に対応し,到達度は中間試験2および期末試験の成績により評価する.授業計画12で到達目標3に関する講義を行ない,レポートにより到達度を評価する.